人事部長からの質問

2003/09/12 100

政治的センスとは何をいうのか?

人事部長にもっとも要求されるのがご指摘の「政治的センス」だと思います。あった人、なかった人を対比させてゆくとよくわかる気がします。中国のなくなられた周恩来さんは(私がみるところ)政治的センスが抜群でした。詳述できませんが、日中国交回復のときに、両国が外相声明をだしました。その文章をつぶさに読んで、政治的センスが卓越していると実感した記憶があります。逆になかったほうの代表として同じく国交回復に貢献した田中角栄さんをあげたいと思います。彼の場合、米国の恨みを買って剣難にあったフシがあります。また、派閥次元でいっても、竹下登のような下克上を許しました。いずれも周恩来には考えられないような展開です。この二人の対比から、政治的センスとは、(長時間の)安全運転能力である、と私はみています。

文責:清水 佑三

2003/09/11 99

適材適所の人事をしたいが…

「適材適所」も「公平」も古代の人たちが空想した「常世の国」のように実在しない理想をいいます。錬金術、蓬莱山、民主主義みな同じです。ただ、そういうものがあるといいなあ、とみんな思うのです。それが実在しない証拠は、下手の横好き、という言葉の存在です。できることは、できるがゆえにつまらないのでやりたくない。下手だからこそそのことに執着する、それが多くの人がもつ性質です。野球の監督などがその典型の例でしょうか。誰がやってもうまくゆかないのが監督稼業というものです。しかし、多くの人がその仕事につきたいと思います。下手の横好きですよね。逆にうまい人がいると、そういう人は人気が出ないので、興行にならないのでクビです。永続しません。適材適所とは架空の動物のようなものです。

文責:清水 佑三

2003/09/10 98

若さとは何ですか?

私は柳田國男さんが好きで、毎晩、かならず一定時間をこの人の本を読むことにあてています。柳田さんのご本には「若さ」が感じ取れるのですね。『山の人生』にしても『海上の道』にしても何か共通するものがあります。幼児時代の甘い想像が根底に潜んでいるように思います。彼はもらいッ子で、今でいうひきこもりの傾向をもった病弱で鋭敏な子供でした。預けられた家のお蔵にあった本を手当たり次第に読んで空想をするのが愉しくて仕方がなかったようです。その空想が、長じてからの彼の本のいたるところに出ています。『山の人生』は六尺、赤顔、毛むくじゃら、というヤマビトと呼ばれる日本原人がつい最近まで我々のすぐ側まで出てきて、我々と接触したという事跡を拾い集めた本です。こういう「空想する能力」がイコール「若さ」ではないか、と思っています。

文責:清水 佑三

2003/09/09 97

ガバナンスとリーダーシップの違いを。

二つの概念の関係をしっかりと認識するのは難しいことですね。いずれも英語だからだと思います。ほんとの意味で語感がないために、すべて「哲学の世界の訳語」みたいな感じがしてしまうのです。ヘーゲルが使った「アウフヘーベン」という言葉を「止揚」と訳していますが、止揚といわれてもピンときません。アウフヘーベンはアウフヘーベンであって、日本語に該当するものがないのです。ガバナンスも同じです。改正商法にうたわれている法の精神は「監査委員は業務執行に口を出してはいけない」です。経営陣が約束した計画どおりに忠実に業務執行しているかどうかをチェックするのがガバナンスの本質です。会計監査院のようなもの、と思えばよい。リーダーシップは織田信長のような人がもっていた破壊のパッションをいいます。

文責:清水 佑三

2003/09/08 96

外部から人事部長を招聘するのは?

「あり」であり、「有効」だと思います。財務部長を外部から招聘するのと同じです。人事も財務も仕事の本質は同じです。ひとことでいえば「資源の調達と運用の最適化」の仕組みをつくり、生き生きと運用する、お奉行さんです。資源が「お金」か「人」かの違いがあるだけです。みなさんには奇異に映るかもしれませんが、「お金」の世界で言われているデフレは、そのまま「人」の世界にもシンクロナイズしています。価値の目べり現象ですね。それが人的資源においても世界的に起きていると考えてよいのです。そういう状況になればなるほど、有用な人的資源を選別する能力が大事になってきます。それがないと組織の存続そのものが危うくなるのです。一つの場所でエスカレーター式であがってきた人はなかなかもてない能力なので、外部から、が正解であります。

文責:清水 佑三