人事部長からの質問

2003/09/22 105

星野仙一監督の采配術から学ぶべきことは何か?

以下は、「猛虎復活す」というNHKのスポーツ番組からの受け売りです。去年一年の監督経験をとおして、星野監督はメンバーの3分の1を入れ替えるという大英断をし、実行しました。この大英断が「選手の危機感」をつくりました。もう一つは伊良部秀輝投手の入団です。人柄や代理人などでとかく色めがねで見られがちな男とじっくり話し合って、この男は信用できる、仕事をやってくれる、と自ら判断したと語っています。その背後に「優等生はいざというときに役に立たない」という彼の人間観があります。また、じゃじゃ馬を使いこなせる「じゃじゃ馬性」が彼の中にあったからできる話です。さらにいえば、投手のことはわかるが、ほかはわからない、打撃は田淵幸一に、守備・走塁は岡田彰布に全部まかせる、が彼の基本的な考え方です。なかなかできない考え方です。信頼された二人のコーチが期待に答えてよい仕事をしているのだと思います。

文責:清水 佑三

2003/09/19 104

部課長登用時にルックスを基準の一つにおくべきか。

よい質問ですね。今回の自民党の総裁選に立候補した四人の候補者についてきくと、若い女性と年配の女性の多くが「亀井さんはルックスとしゃべりかたが嫌」といいます。四人が何を主張しているか、その違いにはまったくといってよいほど興味をもっていない印象があります。同じことが、管理職とその部下についてもいえるのではないでしょうか。人は好きな人のいうことはきけるが、嫌いな人のいうことはきけない、というどうしようもない性質を隠しもっているのです。その性質を逆手にとるべきだと思います。部下の半分は女性です。会社の考えを実行に移すのは管理職層です。ルックスのいい人のいうことをよく聞いてもらえるなら、ルックス基準、話し方基準で部課長登用を考えたほうが得ですね。

文責:清水 佑三

2003/09/18 103

トップから株式上場の方針がでました。株式上場のメリットと上場審査のポイントを。

(回答者が)二つの会社の上場にかかわったことからのご質問だと思います。発行会社の人間としてかかわった経験からお話しします。上場のメリットですが、「統治の透明性と合理性を(株式上場によって)担保できる」が最大の効用だという認識をもっています。わかりやすくいえば、ガラス張りで経営せざるを得なくなるのです。また、計画と結果との距離についてつねに説明責任を負うことが、結果的に経営を強くしてゆく、と思っています。上場審査についてはよくわかりませんが、闇勢力との不透明な関係や(被告の立場で)訴訟を抱えている、はマイナス要因だと聞きました。目が届きにくい連結対象会社で特に注意が必要でしょう。

文責:清水 佑三

2003/09/17 102

一般職と総合職の間にもうひとつ階層をつくりたいが…

反対ですね。屋上屋を重ねる、となります。一般職と総合職という階層区分でさえ、私は反対しています。採用差別というのですが、I種試験で採用された人と、II種、III種試験で採用された人が、生涯にわたって待遇差を強いられるは、人のありようとして納得できないばかりでなく、損得という観点でも損だとみます。なぜ損かといえば、試験の内容が「価値観の多様化、複雑化」についてゆけないからです。流動化は社会の縦横斜めでどんどんなされるべきです。流動化による多様な機会が多様なサービスを生み出す原動力となるからです。その反対が一般職でどんな優秀であっても一定の年限を経るまでは総合職に転じることができない(という)既得権付与型の考え方です。福沢諭吉が慨嘆した「門閥制度は親の仇でござる」という優秀者の閉塞感を(組織内で)培養します。

文責:清水 佑三

2003/09/16 101

新卒採用全廃を視野にいれよ、とトップはいうが。

最近、多くきく意見ですね。新卒を採用し、教育するコストに対しての見返りが期待しにくい社会状況が生まれてきている、ということだと思います。求職側に、新卒三年で多少でも手に職をつけてよりレベルの高い仕事ができるところに転ずる、と考える層が増えてくれば、どんなにお人よしの会社でも(新卒中心主義の)見直しを視野に入れざるを得ないと思います。下手をすると職業訓練機能を社会に提供していることになりかねません。ただ、企業を「価値結社」として位置づけた場合、価値観的に白紙の彼らが先輩との葛藤を通じてよき伝統を吸収して「価値結社」の中核として育ってゆく、という魅力には捨てがたいものがあります。企業における行政職はどこまでいってもなくなりません。行政職の担い手として新卒を採り、しっかり鍛えてゆく、が(御社のような)日本型企業の場合は得だと思います。

文責:清水 佑三