人事部長からの質問

2003/11/20 145

家族主義人事とは何をいうのか?

家族のよさを一番感じさせる場面は、ま冬にコタツに家族全員が揃い、お茶をすすりながら、どうでもよいような話にみんなで打ち興じる光景です。昨年生誕100周年を迎えた小津安二郎監督の『秋刀魚の味』『お早よう』『彼岸花』『東京物語』などは、状況こそそれぞれ違いますが、家族主義的な価値観がよく出ていると思います。我々の心の深層にある死生観がうまく描かれていると思う。文藝春秋の編集者を経て、短編名手の名声を得た、永井龍男の『青梅雨』(新潮文庫)にも、心中前夜の家族の何気ないやりとりが描写されていて、静謐な死生観が浮かび上がってきます。私見ですが、家族主義人事とは、ある価値観のもとに結集した共同体が、静かにしかし美しく滅びてゆくことをよしとする美学をいいます。

文責:清水 佑三

2003/11/19 144

最近、吹き出したような話は?

長嶋ジャパンが韓国戦に勝った時の勝利監督インタビューに吹き出しました。入れ歯のせいでしょうか。サ行がシャシシュシェショになってしまい聞き取りにくかったこともあります。ミスター(長嶋監督のこと)が、しきりに3戦を通して、守りがよかったことを強調していた場面です。ナニシロ、ワンシッテンですもんね、と何回もいうのですね。それが3戦全部で1点しか相手に与えなかったこと(ワンシッテン=1失点)を指しているとわかるまで時間がかかりました。ワンという英語と失点という日本語を一緒にしてワンシッテンといってしまう感覚は凄いです。長嶋英語といいますが、素材として英語を使って、ある奇抜なイメージを伝える才能という点でミスターは突出しています。江川と一緒に4チャンネルで野球解説をしていて、今のはシグナルの間違いですよね。キャッチのミットの出し方がへんだったですよね、とミスターがいうのです。彼の考えでは、捕手が投手へ発信しているのは「サイン(暗号)」ではなくて「シグナル(信号)」なのです。このあたりは高級感のある話ですが、一般にはミスターは英語を勉強していないのではと誤解される危険がつきまとうのですね。とてもおかしい人であります。

文責:清水 佑三

2003/11/18 143

フランス観を知りたい。

エス・エイチ・エルは、多国籍企業で、私がこのチームに入った1987年ごろは、毎年1回、イギリスの本社に世界各国の社長さんたちが集まり、国際会議と称して、今から見ると随分と牧歌的なミーティングを繰り返していました。そのときに、SHL Franceの社長の挙措、言動がとても気になりました。髪型、ネクタイ、服装、話し方、関心事が多くの国の社長と違うのですね。たとえば、SHLグループはアングロ・サクソン系で、データ主義、検証主義の匂いがつきまとってあります。筆跡のような人の感性の正しさを根拠にして人を鑑定する手法を受け付けないのです。ところが、SHL Franceの社長は、頑固に筆跡鑑定有効論を口角泡を飛ばして主張していました。ドビルパン・フランス外相が最近の国連安保理で、米軍の統合指揮権の継続に反対し、多国籍軍の指揮権を国連に移譲するよう要求しているニュース映像などに接するとSHL Franceの彼を思い出すのです。シラクさんの隠し子騒動が政治的失脚につながらない、なども国民性でしょう。面白い国ですよね。

文責:清水 佑三

2003/11/17 142

娘がカウンセラーになりたがっている。

その時代、その時代にあこがれ的に映る職業があります。『助六由縁江戸桜(すけろくゆかりのえどざくら)』という芝居をみていると、この芝居が書かれた享保の頃は花川戸助六(実は曽我五郎)のような江戸の町奴が大変な人気稼業だったことがよくわかります。やたらにかっこよく描かれているのです。博打と喧嘩を渡世にしている男伊達の代表が助六です。今の世で言えば、NPOスタッフとカウンセラーがそれにあたりますね。いずれもその職に就くための養成講座のようなものが巷に雨が降るごとく町に溢れています。さて、カウンセラーですが、私は昭和43年ごろに「カウンセリング」に強い興味をもちました。提唱者の一人と言われるカール・ロジャース全集を隈なく読んだ思い出があります。合点がいったことは、「自己概念が行動を規定するゆえに、間違った自己概念をもつ人には、その補正を試みる人が必要だ」という点でした。なるほどと思いました。アンタッチャブルであるべき人の心の奥の院に職務権限をもって入れる、人を助けた気持ちになれる、という二点で女性性に合致する職業だと思います。

文責:清水 佑三

2003/11/14 141

日本企業の特徴は?

チェスと将棋を比較してゆくと、欧米企業(チェス)と日本企業(将棋)の特徴の違いがよくわかります。その土地で生まれ育ったものは、その土地の人がもつ何かを表現しているからです。チェスの駒の種類は、キング、ルーク、ビショップ、クイーン、ナイト、ポーンと6つです。将棋は王、飛車角、金銀、香桂、歩と8つあります。日本の方が多いですね。升目もチェスは縦横8つですが、将棋は9つで一つ多いです。駒の種類、升目の数が多くなるほど戦略、戦術の自由度は増え、ゲームの複雑性が増します。指し手に高度知能を要求します。また、取った敵駒の扱いですが、チェスは自軍の駒として再活用できませんが、将棋はできます。羽生善治さんは、余談ですが、女性棋士は男性棋士と比べて取った駒を使いたがらない、貯金したがるといっています。面白い話です。以上を勘案して、戦略、戦術の緻密さ、人材活用の多様性において日本企業は欧米企業を凌ぐと私は思っています。

文責:清水 佑三