人事部長からの質問

2003/12/29 170

信賞必罰の効用を。

ベクトルあわせという言葉があります。ばらばらになりがちな個々人の力を共通の方向に向けてゆくときに使われる言葉です。主体性、多様化という価値観は、つきつめるとばらばらの奨励であり、ベクトル合わせ否定論です。それにつけても、日本人という種族はつくづくベクトル合わせがうまい種族だと感じます。自然に、無意識に、ベクトル合わせができてしまうのですね。山本七平さんは『「空気」の研究』でその機微を徹底的に論じました。「そんなことを言える空気ではなかった」の一言ですべてが免責になるのです。そういう我々の奥深くに鎮座する無意識のクセに対して効力をもつのが目の前の「信賞必罰」です。こういうことをするとこんなによい(悪い)目にあう、という実例を次々と見せられると、人は奥深くに鎮座する無意識のクセの出番をとりあえず封ずるのです。「空気」の支配を壊すことができるのは「信賞必罰」だけであります。

文責:清水 佑三

2003/12/26 169

忙しい中で本を書くコツは?

お忙しいのに町内会長職がよく勤まりますね、とよくいわれます。また、どうして忙しい中でそんなにテレビで野球や映画を見る時間があるのですか?と聞かれます。社長=忙しい、という先入観があるのですね。社長も一人ひとりをばらしてゆくと、忙しい人とそうでない人とで正規分布するのです。私は忙しくない方に著しく偏っていると思っています。優秀なコーチ、選手を集めると監督業はだんだん暇になるのです。黙っていてもコーチ、選手諸君が時と所をよく考えて万事よしなにやってくれるからです。ところで、時間をかけないで本を書くコツですが、走り書きをすればよいのです。(走る新幹線の中でパソコンで文字を打ち込むことを走り書きといいます。)それと書いたものを読み返したり直したりせずに、そのまま出版社に渡してしまうのがコツといえばコツでしょうか。出版社の人が読みやすいように直してくれるのです。

文責:清水 佑三

2003/12/25 168

人事部長にお勧めの本を。

前にも紹介しましたが、安保徹さんが書かれた『免疫革命』(講談社インターナショナル刊)を勧めます。ある書評子の方が「生き方・笑いが病気を治すという主張を、裏付け(「自律神経」が「白血球の働き」を高めていくモデル)をもとに分かりやすく書いてあり、非常に納得できる内容である。またガンというともすれば暗くなりがちな話題にあくまでも明るく、希望が持てる姿勢で書かれてあることも非常にすばらしいと思う。」とホームページ上(amazon.co.jp)に書いています。いたく同感であります。個人と個人の集合体である会社は相似形をしており、人の体について言えることは大体において会社についても言えるものです。安保先生が説くとおり、「自律神経」がバランスを崩すことが問題であり、ガンは怖がることはまったくないのです。組織においても全く同じだとみます。読むだに勇気が出てくる本です。

文責:清水 佑三

2003/12/24 167

「質問力」について知りたい。

いろいろな力があるなかで、赤瀬川原平さんの「老人力」が出色です。ちくま文庫に入っています。お読みください。物忘れ、繰り言、責任転嫁…どれをとっても困った性質ですが、時と場所を得れば「力」として働きます。国会の証人喚問でも、たくさんの人が「老人力」を発揮して、虎口を脱しました。立場に窮したときに「老人力」は消極戦法として有効なのですね。「質問力」もまったく同じで立場に窮したときの積極戦法として有効です。どうして自分の部署の成績があがらないのか、次々と「質問」を発して関連しそうな「事実」を集めればよいのです。次第にたくさんの「事実」が集まってきます。次は川喜多二郎さんのKJ法の実行です。事実と事実をつなぎ合わせて、何かに気づくプロセスです。ホームズ探偵の「真犯人つきとめの術」の背後にある力が「質問力」であります。「老人力」「質問力」とも本当に立場に窮して困りきらないと発達しません。修羅場とセットになっている能力です。

文責:清水 佑三

2003/12/22 166

マネジャークラスの中途採用が難しい。

同じことで悩んでおられる会社さんはたくさんあります。プロ野球の新監督の招聘が難しいこととどこかで共通します。今いるコーチ陣をそのまま残して、新監督を招聘するとします。多分、うまくゆかないでしょうね。今回のジャイアンツのように原辰徳前監督に殉じてコーチ陣がほとんど全部退任してくれると、そのことの是非はともかく後任者はとてもやりやすいものです。なぜ、従前のコーチ陣がいると新監督はやりにくいのか。単純です。かれらが牢名主と化してしまうからです。制度、習慣、過去の事例に通じいたるところに人脈をもつものたちが抵抗勢力化したら、どんなに力量をもった人が来ても何もできないでしょう。背後に新監督へのジェラシーがあります。採用の失敗とばかりいいきれないところがあるので悩ましいのです。

文責:清水 佑三