人事部長からの質問

2004/01/19 180

昨日のバスケの韓国戦をみましたか?

衛星放送で見ました。再延長になった場面は、ただただ崇高な時間を共有していると思って膝が震え、見ていて涙がとまりませんでした。最後に点差が開いたときは、韓国チームに惻隠の情さえ感じたほどです。どうして予選で30点を超える大敗を喫したチームが、アテネがかかった本番で同じ相手に競り勝ったのか。後づけの説明はすべてつまらない。ただ、現場にいたキャプテン、コーチが「みんなの気持ちが一つになった」という言葉を再三にわたって繰り返していたのが印象的でした。それだけが難しくまた大事なのだと思いました。よい試合を見せてもらいました。心の保養になりました。

文責:清水 佑三

2004/01/16 179

景気がよくなる、とみる根拠は?

日本に限定した話をします。三つあるとみます。(1)鉄鋼業が元気になった、(2)買いたいものが出てきた、(3)円高、です。咄家(はなしか)さんの三題ばなしみたいで恐縮です。順を追ってゆきます。わが愚弟がある鉄鋼メーカーで鉄板を売っているのですが、中国向けの輸出がメチャクチャに好調なのだそうです。会社全体に元気が出てきているそうです。鉄は産業全部のコメです。そのセクターの回復は心づよい。二番目の買いたいものの登場ですが、私個人をみていてそう思う。一眼レフのデジカメがほしい、大容量のDVDレコーダーがほしい、ホームシアターがほしい、と最近立て続けに欲しいものが出てきました。食欲が出てきたら確実に病気は治ります。三番目は円高です。円高を忌避する向きがありますが、私はそう見ない。ここで詳述するのは控えますが、円高は国力の360度評価です。国力の増進と景気回復はコインの表裏です。

文責:清水 佑三

2004/01/15 178

制度設計の要諦は何か?

わかりにくい、複雑である、心理整合性が高い、の三つをあげたいと思います。それで思い出したのですが、野坂昭如に『エロ事師たち』というデビュー作があります。その小説のなかで、スブやんだったか伴的だったかが「世界でいっとう偉いやつって誰やねん」「そやな、ジョンソンいうおっさんやないかな」というくだりがありました。うろ覚えなので、正確ではないです。まさにその通りでアメリカ大統領は世界の構造を変えることができます。その世界で一番偉い人を決めるのがアメリカの大統領選挙制度です。その選挙制度はまことにもって複雑でわかりにくいところがある。しかし、アメリカ国民という賢いのか賢くないのかよくわからない国民にとって整合性がとても高い。つまり感情的矛盾が少ないのです。よい制度とは何かについての考えるヒントだと思います。

文責:清水 佑三

2004/01/14 177

「逆面接」の売行きがよいようですが?

amazonの集計では私が出した(売れない10冊の)本の中ではトップみたいですね。12月19日に書店に並び始めた本ですのでまだ1ヶ月しかたっていません。でも通常の本は最初の1ヶ月の売行きが勝負のようで、この間に売れないと市場から引き上げられてしまいます。株式市場のように退場まで面倒をみてくれるのとまったく違うのですね。そういうわけでこの1ヶ月はとても気になるものです。東洋経済さんの本は大都市中心なのですが、全国でまんべんなく動いている、という話もあり、ネットの書き込みも好意的なので、即退場にはならないのではと期待をもっています。人事部長を読者に想定して書いた本です。題名は奇抜ですが、人の話をうまく聴ける(質問力のある)人ほど世間を幅広く活発にわたることができる、どうしたらそういう人になれるか、を書こうと思いました。学生に警鐘を鳴らしている部分も多いので学生が読むことも歓迎しています。

文責:清水 佑三

2004/01/13 176

私には趣味といえるものがない…

荻生徂徠の『弁名(上)』のはじめのところに、「世は言を載せて以って移る」とあります。岩波古典文学大系(昭和48年初版)の校注者は「時代の変遷に伴って言語も変遷した」と注記しています。まあ、そんなところでしょうか。昔は趣味といわずに道楽といいました。趣味(楽しみですること)は身を滅ぼさない。場合によっては崖っぷちまでゆきますが、踏みとどまるところがあります。ところが道楽(遊興に惑溺すること)は違う。何もかもをつぎ込んで崖から飛び降りてしまう。図式化すれば、道楽→趣味→無趣味の順で危険がありません。人のなりわいには、虎穴に入らずんば虎子を得ず、という一面も確かにありますが、君子危うきに近寄らず、の方が格言としてのパワーは強い。無趣味の人ってほんとに賢い、と私は思います。性愛領域で以上申し上げたことを考えてゆくともっと理解できると思います。

文責:清水 佑三