人事部長からの質問

2004/01/26 185

労働組合の未来は?

タコ部屋と「職安」、ストライキと「勤労」、過激派と「公安」はそれぞれ対になって存在しています。タコ部屋、ストライキ、過激派が潮がひいてゆくようにしてなくなると、「職安」「勤労」「公安」も存在理由がなくなってしまうのです。後づけの理屈はいくらでもいえますが「ゆく川の流れはかくの如きか、昼夜をおかず(論語)」という慨嘆しかないでしょう。労働組合の未来についてのご質問ですが、組合費の天引き徴収がある限り組織率の下げ止まりはないと思います。貧すれば鈍するが世の習いです。軍資金の枯渇とともにハイリスクハイリターンな施策は打ちにくくなります。組織防衛しか手がなくなる。魅力のない言動に終始しはじめます。学校を出たての新人たちには益々、異様な存在と映ります。明るい未来はなし、という回答であります。

文責:清水 佑三

2004/01/23 184

どんな会社がこれから伸びますか?

利益成長シナリオ→投資の引き出し→利益成長実現→配当アップ、の循環構造を創れた会社が伸びると思いますね。その理由を説明しましょう。ご紹介したい面白いデータがあります。日本IR協議会がまとめたもので、「誰を意識して経営するか?」という経営者への質問調査です。回答254社のうち48.8%が「機関投資家」をトップにあげ、31.1%が「個人投資家」をトップにあげています。二つの合計で実に80%です。「メインバンク」と回答したのはたった1社でした。労働組合はゼロでした。機関、個人投資家がともに重要だと考える項目があります。その企業の「利益成長シナリオ」と「配当性向」の二つです。ここにヒントがあります。しっかりした利益成長シナリオをもち、それが目論見どおりに現実化して、投資意欲に還元ができる企業のみが、成長原資(元手)を手にすることができると考えます。

文責:清水 佑三

2004/01/22 183

就職協定の復活が言われているが…

日本経団連がさきごろ加盟各社に出した「4月以降に採用選考を」という倫理基準のことを指しておられると思います。倫理基準ですので、就職協定復活というのはあたりません。採用側、被採用側で交わされる社会的な約束の色彩をもっていないからです。どうして今、というのがポイントです。やはり景気加熱を見越しての行動でしょう。当たることで定評のある某シンクタンクは、2004年の実質GDP成長率をOECD加盟国全体で2.8%と予想しています。高い水準です。成長率は中国、米国、日本、ユーロの順で高いとみています。経済は政治と同じで、その時の人の気分の影響をもっとも強く受けます。先進諸国の人たちの気分がハイのギアに入ったとみるべきです。就職試験を控えた学生が浮き足だつのは目に見えています。主要企業が選考時期を後ろに倒すことで、大学側(の学事日程)に配慮する姿勢を見せたということでしょう。

文責:清水 佑三

2004/01/21 182

イエスマンはいけない?

とんでもありません。社長を16年やってよくわかったことですが、社長職には結構しんどいものがあります。骨を拾ってくれる人が後ろにいないからです。上位者に相談することで下位者は心労の一部を放擲できます。相談された上位者もまた、その上位者に相談することで、多少は楽になれます。ところが社長の後ろには誰もいない。ゴミの排泄機構をもたないわけですから、ゴミはたまる一方になります。そういうときに、癒しの効用をもつのがイエスマンです。昔の吉原では太鼓持ち、幇間といいました。酒席の雰囲気をよくすることをもって生業(なりわい)とする男たちです。具体的にはお大尽さまの気分を明るくしてお金を引き出す役割です。そのためには追従、おべっか、お世辞がもっとも有効でした。イエスマンは現代の太鼓持ちです。社長は周囲にこの手の人をおかないとやってゆけない。精神衛生の平衡が保てない。結果的に会社をつぶすことにもなりかねない。会社を守るために、(私は)自分を支えてくれる人の人選基準をもっぱらイエスマンの度合いにおいています。

文責:清水 佑三

2004/01/20 181

「笑い」にこだわっておられるが…

私のこだわりはたくさんあって、こだわりライブラリーを肩にしょって毎日が日曜日という感じであります。こだわりライブラリーの中でも、関心の強さしつこさという点で「笑い」は多分、最上位にくるテーマだと思っています。「笑い」についてまじめに考えているなあと笑えたのは池田晶子さんです。福沢諭吉の現代版のような人です。彼女は去年三月に出した『あたりまえなことばかり』(トランスビュー社)の中で「ヘンだと感じた瞬間、理性が自爆して反射的に笑いが飛び出す」という意味のことを書いています。そのとおりだと思うのですね。笑いをとれる人、はもともとヘンな人なのです。しかも無自覚にやっている行動がヘンなので、再生産をしてくれ、といわれてもなかなかできない。笑いをとるスピーチをと社員のみなさんにお願いしていますが、ふだんは間違いなくおかしい人が、壇上にあがるとつまらなくなる。不思議ですね。「笑い」の構造をしっかり分析して再生産可能なモデルまでもっていっているのは、わがみるところ、三遊亭円歌師匠でしょうか。

文責:清水 佑三