人事部長からの質問

2004/02/17 200

業務合理化の手順を。

仕事を並べることがまず先決です。並べ方の要諦はかかっているコスト順です。コストが高い順に次のような点検をしてゆきます。(1)その仕事を分社化できるか、(2)外部委託できるか、(3)外部事業者からパックで買えないか、です。分社化できるかどうかの判断基準は「経営資産の市場価値」です。外部委託できるかどうかの判断基準は、「サービス受益者の満足度」です。外部事業者からパックで買えないかどうかの判断基準は「コスト・パフォーマンス」です。以上の点検をして、いずれもについてもノーという場合についてのみ社内業務として残します。こういうプロセスで点検すると、社内業務として残すべき仕事は政策立案部門だけになります。以上はイギリスのサッチャー政権が1987年以降とった行政部門の効率化プロセスを範にして考えたことです。

文責:清水 佑三

2004/02/16 199

社長の仕事は何ですか?

再投資可能資金をどうやって(構造的に)つくるか、また獲得されたその資金をどう使うのか、この二つが抽象的な表現ですが、究極の社長の仕事だと思っています。前者は今、日銭になるおいしいビジネスモデルづくりです。後者はあしたのおいしいビジネスモデルづくりです。やってみると本当に難しい。今やっているやりかたを合理的に批判する人はゴマンといるが、今もっている経営資産をうまく使って確実に利益を生む構造に変えてゆく道筋を合理的に提案してくれる人は皆無に近い。どうしても社長が考えないといけない。朝、昼、夜、睡眠中も含めて上の二つを考え続けるのが社長の仕事です。浅草演芸ホールなどへ平日の昼にゆくと社長らしい人の姿をときどきみかけます。ああいうところで頭を空っぽにしないとやっていられないからだと思います。

文責:清水 佑三

2004/02/13 198

(社内)身分制度を否定してよいのか?

身分制度は考え続けている問題の一つです。中央集権(身分固定制度)と地方分権(身分流動化)という問題に似て、振り子の揺れのようなもので、つねにどちらかの方向に動いているものであり、どちらがよいというニ値的な解はないのでは、というのが漠然とした(今の)思いです。福沢諭吉の門閥制度は親のカタキでござる、というのはそれはそれでよくわかるのですが、福沢が慶応義塾をもって「日本の知徳の模範、気品の源泉」とするしたのは、あらたな門閥制度の創業宣言ではないかとも思えます。マルクスの『共産党宣言』は身分制度破壊の狼煙ですが、共産党内の職制はよりタチの悪い身分制度ではないのか、とも思えます。社会的身分の上昇(アメリカンドリーム)が社会を活性化させる有力な契機の一つであることは言をまちません。企業内身分制度を人は必要としている、と私はみています。いかにそれを弾力的に運用するかが大事だと思います。

文責:清水 佑三

2004/02/12 197

定期昇給をなくすとどうなる?

春はあけぼの、やうやうしろくなりゆく山ぎは、すこしあかりて…(清少納言)という明るい気分が消滅するでしょうね。入社1年生たちが「ひめやかな自滅願望」を必死に封じ込めて1年間頑張ります。春はあけぼの、の気分で手にできたのが定期昇給です。それがなくなると思えばよいでしょう。ちなみに私が勤めている会社の場合、(四大卒だと)初年度12600円、二年度13400円、三年度14100円の定期昇給があります。定期昇給でありますが、物価上昇分を補填するといった考えからは出ていません。習熟度手当であり、後輩たちに対する面倒み手当であるという認識をもっています。こういう定期昇給制度は、(体育会のような)上級生が下級生を自然に技術的、人格的に育成してゆく風土、雰囲気を見えないところでつくっていったと思います。定期昇給制度の廃止はそういう風土の消滅とセットになっています。

文責:清水 佑三

2004/02/10 196

日亜化学を対岸の火事と思えない…

と思っている経営トップは多いと思います。記憶に新しいところでは、昨(2003)年の秋にキヤノンの元社員が、レーザービームプリンター印刷技術の発明で、東京地裁に10億円の支払いを求める訴訟を起こしました。このケースは、発明報酬84万円を提案した会社に対して、再評価要求が出て、会社側が拒否したことが発端になっています。一審で審理が進行していますが、司法判断がバラバラでは国家は成り立ちません。日亜化学の一審判決は間違いなくキヤノンの事案に対する判決に影を落とすでしょう。会社がとりうる方策はただ一つ、fragmentation(破砕、断片化)政策だけです。一つの技術的発明だけで会社が繁栄した場合、いかなる形で発明者の了解をとったとしても凄腕の弁護士たちが登場して、いつか会社は「夏草やつわものどもが夢のあと」となるでしょう。

文責:清水 佑三