人事部長からの質問

2004/03/02 210

この欄がとりあげる質問者は人事部長だけか?

実際には実に多様な方々から質問をお寄せいただいています。この欄を始めたころは、特定の人事部長の方々の協力を得て、ひごろ悩んでおられることを自由に書き出していただき、おもしろそうだな、と思うテーマをとりあげてきました。次第次第に、質問をお寄せくださる方が増えてきて、今では学生の人たちからも質問が届きます。かりに学生の人からの質問であっても、内容が人事マンとして役立つものだと思えば、とりあげています。質問がとぎれたときは、過去、お会いしたたくさんの人事部長さんとのやりとりを思い起こし、それぞれの方の問題意識を反芻して、質問の形で表現し、回答努力をしています。お蔭様でアクセス件数が増えて書き手冥利に尽きるといつも思っています

文責:清水 佑三

2004/03/01 209

考課項目が問題なような気がするが…

よい着眼だと思います。ピラミッド型の組織において、指揮者のタクトにあたるものは「考課項目」なのです。喩えば指定校推薦制度をとる高等学校で人気大学への推薦制度の「項目及び基準」をいじるだけで(そこをめざす)生徒の行動が変わるのと同じです。全指定校が仮に部活での活躍という「項目」を外したら、全部活は閑古鳥が鳴くようになります。そのくらい(考課項目は)考課される人に対して強い影響力があるのです。具体的な項目の点検法ですが、求める役割との整合性を確認してください。たとえば、野球の1番バッターの役割を「出塁」「走塁」と規定した瞬間に、「選球眼」「俊足」「左打者」という考課項目が導かれます。考課項目の焦点がぼけている(という訴えのある)会社を調べると、ポジション別の役割を会社が定義していないことがよくあります。

文責:清水 佑三

2004/02/27 208

恋愛、家族、趣味、地域などに多くの時間を割く人の処遇。

私自身、30歳台の大半をそのように過ごしてきたので、お尋ねに接し、どきっといたしました。さて、そういう人の処遇についてのお尋ねですが、まずは割り切れる仕事をお願いし、少しづつ難易度をあげてゆかれればよいでしょう。どこまででもついて来れる場合、城山三郎さんの『官僚たちの夏』のモデルの1人佐橋滋さんを彷彿させます。よく遊びよく学びそしてよく仕事をする、というタイプです。佐橋さんは自ら『異色官僚』と公言してマイペースを生涯、貫かれましたが通産の事務次官まで上り詰めました。仕事を下位におくのは問題外ですが同列にたくさんの価値(幸福)をもって生きるのは決していけないことだとは思えません。

文責:清水 佑三

2004/02/26 207

定着率が悪い、と指摘されるが…

たとえば、相撲の社会の呼び出しという仕事を例にとりましょう。(呼び出しの声で)ざわざわした館内の雰囲気が多少でも変わるようになるのに、最低でも15年かかるといいます。そういう仕事世界において定着率が悪い、は決定的な意味をもちます。どんどんレベルが下がってゆくわけです。逆にだれを採用しても意欲継続期間は平均で2年、前後1年くらいのばらつきがある、という仕事を想定してみましょう。その場合、定着率がよい、は意欲のない人のぶらさがりを意欲のある人が支える構造の再生産を意味します。その両極を意識して自社における定着問題を調べるべきです。仕事の成果が勤続期間と正比例の関係があるかについて(仕事別に)データをとって眺めてみればよいでしょう。

文責:清水 佑三

2004/02/25 206

持株会社の人事マネジャーの仕事は?

グループ内での人的資源の調達と運用のチェックが主要な仕事になるように思います。トヨタさんの工場でのカンバン方式をグループ全体の「人的資源」に応用するわけです。必要なときに、必要なものが、必要な数だけ揃えられているか、無駄なためおきはないか、をグループ全体の価値を最大化する視点でみてゆくことがポイントです。どうしても個々の事業会社内での最適化に目がいってしまうものだからです。またグループの経営戦略はつねに動きますから、その動きのスピードにあった調達と運用の弾力性が確保されているかどうかの点検も大事な仕事だと思います。

文責:清水 佑三