人事部長からの質問

2004/03/16 220

年齢についてのお考えは?

中村光夫さんに『知人多逝』というエッセイ集があります。奥付をみると1986年刊とあるのでもう20年ちかく前に出た本です。そこに中村さんの年齢についての考えが書かれていて、購入当時、強く、深く、共感したのをよく覚えています。彼は、エミール・ゾラの「人は自分の責任において自分の人生を設計し選択しているように思っているが、遺伝子等の(自分では見えない)自然の構造によって生かされているのであり、寿命が尽きればそこで死ぬ」という(いわゆる)自然主義哲学に対して「やはり無視できない考え方だ」と肯定的に述べています。私も同感であり、このごろとみに逃れられない「死」と親しむことの大切さを思うのです。ちなみに今日は私の(サラダ記念日ならぬ)還暦記念日であります。

文責:清水 佑三

2004/03/15 219

論理性とは何をいうのか?

よいご質問です。哲学、美学で大きな貢献をした『シンボルの哲学』の著者、スーザン・キャサリーナ・ランガーは、感情における論理の存在を強く指摘しています。また、数学者の(故)岡潔さんは、どんな矛盾のない数学上の証明であっても、多くの人が感情において認めないものがあり、数学史の主流にならない、というようなことを指摘しています。いずれも面白い指摘です。これより「飛躍」ですが、日本建築でいう柱や梁の軸組み、まさにあれが論理性の正体だとみています。力学の法則にかなった柱の軸組みがなされると万古不易の強さを持つのです。宣長、徂徠、白石の著作に貫かれている「文意のわかりやすさ」が論理性であります。

文責:清水 佑三

2004/03/12 218

(ノーベル賞の)田中耕一さんについてどう思うか?

田中さんには強い興味をもっています。NHKが放映した「にんげんドキュメント」シリーズに登場した田中耕一さんの映像は繰り返し、繰り返しみています。彼はある個人的な問題があって東北大学入学後、落ち込んでしまい留年までしています。地獄をみたといってよい経験をしているのです。人を自滅させる場所から彼は這い上がってきました。「コツコツやることを教えた父」「分け隔てなく育ててくれた母」「化学の面白さを教えてくれた小学校時代の先生」が最後の最後のよりどころになった、と述懐しています。メンタル面の本当の強さとはそういうものです。眉毛が特徴的な人です。詳述できませんが彼の眉毛の姿、形は彼の宿命をよく語っており、(眉毛について)東洋観相学のいうとおりの人です。

文責:清水 佑三

2004/03/11 217

採用選考時に学校名をきかない理由。

私にはよくわかりません。その人の自分史を語ってもらい、語られた内容を評価するのが選考だと思います。どの学校、学部、学科でどういう指導教官について何故、何を、どう勉強しているのかは、最重要といってよい自分史の項目だと考えます。また、大学人の教育に対する情熱や努力という視点からみても、(大学のブランドを社会が問題にしないというのは)合点がゆきません。入社後、学校名を既得権としてみない、は当たり前のことで応募者を深く理解することとは別問題だと思います。

文責:清水 佑三

2004/03/10 216

本社(外国)と支社(日本法人)の機能が重なっていて無駄が多いが…

ご指摘の多国籍企業の本社、現法だけの問題ではなく、日本企業の本社と支社、国家と地方の分権問題など、日常茶飯に見られる現象です。本質的な解決法は、立法府にあたる機能(全体を規定する方針作成)は本社、行政府にあたる機能(方針を実行に移す)は現法と決めておくことだと思います。徳川政権は、このあたりの機微について実によく考えていたフシがあります。幕閣の仕事と各藩のご重役の仕事がうまく分けられていました。ご参考までに。

文責:清水 佑三