人事部長からの質問

2004/05/17 260

「社員満足度」と「競争力」との関係を。

社員満足度を「この会社は自分にとって居心地のよい会社である」という質問項目への全社員の「イエス」回答の割合によって定義し、競争力を売上成長率で定義するとします。実際に2つのデータの関係を(多数のサンプル会社の協力を得て)調べたことがあるのですが、前者と後者は反比例するのです。卑近な表現をとれば、子飼いの選手の居付きがいい野球チームは強くなれない、のです。このことは、「社員満足度」が高く、同時に「競争力」が高い会社は、稀有であることを意味しています。その稀有な理想を実現させている国があります。インドのアッサム平原と中国のチベット高原の間に位置するブータンです。「この国に生まれたことを幸せだ」と思う大多数の国民をもち、一方で、南アジアにおいて群を抜く、長年にわたる高い経済成長率の持続に成功しています。英明な君主の治世ゆえ、といわれていますが、何故それを可能にしたか、研究に値いすると考えます。

文責:清水 佑三

2004/05/14 259

「法令遵守」の風潮をどうみるか。

あるビジネス誌に「個人情報漏洩の大秘密」とあったので読んでみたら、何のことはない、会社に恨みをもつ人をつくらないことだ、とあって笑えました。今の時代の知性発動の様式を示す典型事例ですね。憲法で保障する「思想、信仰の自由に抵触する」という理由で尊敬する人について尋ねない、機会均等を保障するために採用面接において「学校名」を見ざる、聞かざる、言わざるとして扱う、みな同じです。一言でいえば、知性における免疫力の衰退現象です。「法令遵守」も同じですね。江戸時代に日本を訪れたヨーロッパの知識人は、庶民の「法令遵守」の感度の高さに驚きました。彼らが今の日本人をみたら、逆の驚きをもつでしょう。「法令遵守」は一人ひとりの個人のなかに育つチームや社会への信頼感情そのものをいいます。制度をもって「法令遵守王国」を実現しようとしても無理です。

文責:清水 佑三

2004/05/13 258

新人育成の要諦は?

悪しき平等主義を廃することです。功あるものには金を、能あるものには地位を与えよ、という古言をそのまま(新人にも)適用するのがよいと思います。新人だから、といって小学生、中学生のように一律の勉強をさせてゆく考え方は百害あって一利なしです。理由は、旧人よりも性能面、意欲面で優秀な新人がたくさんいるからです。そういう性能、意欲を発揮させる機会を(勤続年数不足を理由に)与えないのは典型的な(いわゆる一つの)バカの壁です。マネジメントの力量さえあれば、個々の新人がもつ天才性を会社業績に反映させることはいくらでも可能です。どうしても集合教育をしたいのであれば、「ストレス耐性」強化のために理不尽な研修プログラムを組む、もまた新人育成の要諦であります。

文責:清水 佑三

2004/05/12 257

菅さんの年金不払い辞任に学ぶことは?

(1)人を呪わば穴二つ、(2)先手必勝、(3)弁解無用、(4)賞味期限といった言葉が思い浮かびますね。今回の菅さんの問題には、不払い閣僚に対する「惻隠(いたわしいと思う気持ち)」の情を欠いた彼の言動が伏線にあったと思います。他人を攻撃すると、自分の身に跳ね返ってくるものなのだと思います。それが(1)です。「先手必勝」は福田康夫官房長官の電撃的出処進退を指します。同じことをやるなら先手がいいのですね。(3)は文字どおりです。行政窓口の手落ちであるかのような説明は(弁解としての)出来が極端に悪かったと思います。(4)はもっとも大事な点ですが、芝居でいえば、彼が主役を演じた一幕一場が終わっていたということでしょう。役者はどうしても「ナルシスト症候群」の弊を免れず、すでに緞帳がおりているのになかなか気づかないものです。全体としての感想ですが、党内の選挙で勝った鳩山由紀夫をわずかな日月でひきずり下ろした(所業の)バチがあたったと私はみています。

文責:清水 佑三

2004/05/11 256

修羅場の効用を説かれているが…

前にも書いたことがありますが、血なまぐさい「生き死にを分ける戦乱の場」を修羅場といいます。シュラジョウと読むのが正しい読み方です。私がこの言葉に注目したきっかけは、荻生徂徠の『政談』です。彼は戦国の武将の方が(徂徠が生きた寛文〜享保の)武将よりも智恵と勇気があったと慨嘆し、戦場の喪失ゆえと理由づけていました。その通りだと感じたのです。それなら自ら修羅場をつくってその場数を増やすしかない、と考えました。その結果、私の自分史は修羅場に彩られましたが、いずれも(志願して)作っていったものです。具体的には大きな夢をもち、その夢に向かって進軍を開始する、に尽きます。退路を断って敵を定義して臨めば、日常坐臥のすべてが修羅場と化します。

文責:清水 佑三