人事部長からの質問

2004/05/24 265

質問5回目です。「事に仕えて濁らず」とよく言われるが、その意味を。

野球の選手がグランドに入るときを見てください。番長といわれる清原和博も、グランドに入るときと、グランドを後にするときは、祈るような表情でグランドに向かって深く一礼をします。道場に入るとき、出るときの剣士とまったく同じです。なぜなのでしょうか。野球という「事に(真剣に)仕えて」いるからです。自分の仕事への尊敬心が仕事場への態度に出ているのです。グランドで、もっている株をいつ売ろうかとか、あの人は本当はもう別れたいと思っているのではないか、とかは絶対に考えません。そんなことを考えてプレーをしていたら、怪我をするか、ポカをやります。以上が私のいう「事に仕えて濁らず」の意味あいです。

文責:清水 佑三

2004/05/21 264

研修部不要論が社内にあるが。

おっしゃる人たちのお気持ちはよくわかりますが、強い軍隊、強いスポーツチームほど、練度(よい研修を受けている度合い)が高いものです。ただ、練度だけが単体で存在するわけではなく、優れた戦略、兵員、装備、人心の後押しがないと意味をもちません。研修部不要論は、研修部が戦略、兵員、装備、人心から遊離してしまっているところから来るものです。明確に組織の戦略が定義され、兵員、装備、人心がその戦略にそって同期(シンクロナイズ)されれば、兵員の練度を高める部署・機能はとても大切になります。こうした異なる機能を一定のバランスをもたせつつ、有機的に結びつけるのが経営の役割です。研修部不要論が出てくる背景に、トップの経営能力不在があると私はみます。

文責:清水 佑三

2004/05/20 263

小沢一郎観をききたい。

(何かで読んだうろ覚えですが、)小沢一郎さんは小鳥が好きで、飼っている小鳥の世話はどんなに多忙でも欠かさないそうです。また、こよなく奥さんを大切にされていて、奥さんがつくるお弁当をお昼になるとおいしそうに食べているそうです。そういうところに彼の何かがよく出ていると思います。この時代に、「代表なんちぅのはね」と記者会見で切り出す土臭い政治家は皆無でしょう。天然記念物みたいなものです。ゴルバチョフ全盛の時に、モスクワを訪問し、ゴルビーに向かって「あなたのように有名な人と会えて嬉しい」と語ったというのもおもしろい。自分が先に誰かのファンになってしまうという意味で長嶋茂雄さんと共通するものがあります。毀誉褒貶の激しい人ですが、竹下派七奉行の中で今なお最前線で存在感を感じさせるのは彼だけです。端倪すべからざるものをもっている人だとみます。

文責:清水 佑三

2004/05/19 262

景気は過熱気味なのか?

景気という時に、どの部門についていっているかが問題です。一般に政府、企業、家計と分けて考えますが、政府は企業と家計からの税収を基本財源にしていますから、直接的ではなく、企業と家計の2つが景気をみるときの基本要素になります。企業の利益とそこで働く人の収入の関係性についていえば、この3月決算では、3種の新神器と中国特需で潤う一部の勝組をのぞき、売上微増、利益激増という特徴が顕著でした。一言でいえばリストラ効果によるものです。結果として、雇用が減り、また働く人の家計にもしわ寄せがいっています。また「ゼロ金利」効果で、支払い利息は減って企業利益は増え、一方、貯金を銀行に預ける家計は、受け取り利息が減って家計は苦しくなっています。さらに楽天ショップやヤフーオークションを多用する私のような地方在住者が増えたおかげで、多くの(地方の)パパママストアは存続そのものができない時代に入っています。それやこれや考えると、雇用増、家計増につながる明るい構造要因は、残念ながら見当たらない感じがあります。

文責:清水 佑三

2004/05/18 261

「品質」に対する社員の問題意識を高めたいが…

品質という言葉を使うときに留意すべきは、「信頼性」という観点と、「価値」という2つの異なったものの弁別です。前者は、品質管理につながる概念で、商品要件を満たさない不適格品の含有率のイメージです。後者は excellent quality につながる概念で、顧客がその商品を信頼、尊敬する根本的な特性についての表現、言及です。前者の意味あいでの「品質」であれば、社員教育は可能です。繰り返し、繰り返し、自社、他社の「リコール事例」を説けばよいのです。ところが、後者についての「品質」教育はとても難しいものです。社員は、仕事をして対価を得るためにその会社にいるのであって、その会社の商品のファンであることを必ずしも要しないからです。熱狂的な自社商品のファンを採用して社員とする、しか手がないのでは、が回答です。

文責:清水 佑三