人事部長からの質問

2004/06/21 285

『会社に行くのが苦にならない』への回答ポイントが(他社より)低かった。

成果主義を文字どおりに実践されているから起こる現象です。やってもやらなくても給与が変わらず休暇申請は自動的に通る、残業をつけても誰も審査している様子もない、といった場合、『会社に行くのが苦にならない』への回答ポイントは高くなるものです。居心地がいいゆえです。官庁や地方自治体の外郭団体のような、競争にさらされない、あってもなくても誰の目にもとまらない、しかし税金によってまかなわれる組織において、そういう状況が生まれやすくなります。かれらの居心地をよくするために、民間企業の構成員が『会社に行くのが辛い』努力を積み重ねるといったバカなことがおこります。一方で、部署別に回答ポイントを比較し、もっとも低い部署に対して精査すべきです。その職場が昔のたこ部屋のようになっていないか、という問題意識をもって調べてください。管理者のサディズムの犠牲者を出してはならないからです。ゆきすぎた成果主義ゆえに心身を蝕む構成員がいるのではないか、という問題意識をもって精査してください。

文責:清水 佑三

2004/06/18 284

会社へのロイヤリティを高める具体的方法は。

回答者として私は適任ではありません。会社へのロイヤリティを否定している人間だからです。「事に仕えて濁らず」という言葉を(揮毫を求められると)書きますが、その意味は会社や上司に仕えるな、仕事に対してロイヤリティをもて、に尽きます。会社や上司はあなたを守ってくれないが、仕事(の技術や経験)は、あなたをまもってくれる、が背後にある認識です。この回答では質問者に対してあまりに失礼なので、文字どおり、会社へのロイヤリティを高める具体的な方法についてのアイデアを出しましょう。社員の(自社への)ロイヤリティの度合いを測る尺度を用意することです。定期的に何らかの方法で全社員のロイヤリティ得点データを得ます。その得点がいかなる要素、要因の関数であるかを分析します。この分析が優れていると、御社におけるロイヤリティの構造があきらかになります。原因がつきとめられればそれにそって処方を導くのです。

文責:清水 佑三

2004/06/17 283

社員の個人主義的風潮が目に余る。仕方がないのか?

全体主義(諸個人を全体の目標に総動員する思想や体制(広辞苑))と対比して個人主義(全体の利益に優先させて諸個人の意義を認める態度(同))といわれるのであれば、別段、どうということないのでは、と思います。というより、全体主義企業は顰蹙、噴飯ものだと考えます。そうではなくて、個人主義という言葉の中に、利己主義や自己中心主義のニュアンスをこめておっしゃっておられるのであれば、企業をゆがめる「ゆゆしき問題」だと考えます。そうした風潮がどのように醸成されるか、ですが(1)会社が理想を喪失し、惰性に流れている(2)社員に利己的、自己中心的言動があっても、体を張って叱り付ける先輩、上司がいない、の2点が考えられます。いずれも制度の問題ではなく、人間の生き様の問題です。仕方がない、と考えずに有志が立ち上がって強い意志をもって変えてゆくべきです。

文責:清水 佑三

2004/06/16 282

受身、無責任の社員が多い。どうしたらよいか。

受身と無責任は本質が違います。受身はパーソナリティ(その人の性癖=意識せずにとる行動)に関係する言葉であり、無責任は価値観(その人の美学=何がカッコヨイと思うかの好み)に関係する言葉です。どちらがよりDNAの支配を受けやすい(変容しにくい)かといえば、私見ですが、前者です。無意識に石橋を叩いて渡っている人が突然冒険家に転じるようなことは実際には少ないものです。それと同じで、受動・能動の違いは右きき・左ききの違いと考えて住居変更を無理強いしないほうがよろしい。受身が悪いということはまったくありません。よい会社は9割の良質の受身の人によって成り立つものです。他方、無責任社員ですが、これは会社の中にカッコヨイ人がいないことに起因することが多い。カッコヨイ先輩を多種類もつ、が考えられる処方箋です。どの種類かに感応して、後輩たちはその人を目指しはじめるでしょう。

文責:清水 佑三

2004/06/15 281

少子化問題についてどう思うか?

乳幼児死亡率の高さと少子化傾向は逆比例関係にあるとみます。生後まもなく死んでゆく子供が多い社会ほど多子化傾向となり、そうでない国ほど少子化傾向となるのは、(生物の群れとして)自然です。それが一つの視点です。もう一つ見逃してならないのは、少子化問題が生じている先進国はどこか、という視点です。日独伊三国において(少子化問題が)顕著なのです。このことが何を意味するか、興味ふかいものがあります。次に続くを信じて、と戦争に踏み切った国々が志を果たせず大きく挫折しました。そこで受けたトラウマが少子化問題の根底にある、という見方もありえます。私は、少子化傾向に歯止めはかけられない、優れた高齢化社会の建設が次のテーマになると考えます。

文責:清水 佑三