人事部長からの質問

2004/07/27 310

官僚制の弊害は?

よく言われているのは、法による支配の名のもとに、(1)実質的な専制政治がなされる、(2)秘密主義が貫かれる、(3)公平に見えるが実際はそうではない参入障壁を用意し「おいしい蜜」を少数者で独占する、(4)特定のものが「公共的機能」を私物化してしまう、などでしょうか。天下の名門企業がどうしてこんなにひどいことになってしまったのか、という事例はたくさんありますが、そのほとんどが大規模な組織に特有な「官僚主義」の跋扈によるものといってよいでしょう。次第次第に、まじめな人たちが、一所懸命に仕事をするのがバカバカしい組織体になっていきます。その昔、福沢諭吉が「門閥制度は親の敵でござる」と嘆いた江戸諸藩の閉鎖性などが、官僚制の典型の姿だったと思います。有能な人からみると、もう革命しか手がない、となるのです。

文責:清水 佑三

2004/07/26 309

誰が上司に来ても最善を尽くせないとダメか?

監督が変わったからといってふてくされている選手がいたらプロとして暖簾を張りつづけられません。また、ファンも泣きます。監督が誰であってもベストを尽くす宿命を(プロの選手は)もっていると考えるべきです。野球という「事に仕える」のがプロなのですから。ところが、総合職採用されたキャリア組の人は、そういう意味での(特定の)仕事をもちません。在籍中、ずっと会社に仕えるのです。その人にとって抽象的な意味での会社は存在しません。会社=上司、なのです。そういう人にとって、意に添わない上司に遭遇した場合、この世は闇となります。ふてくされるな、という方が無理です。

文責:清水 佑三

2004/07/23 308

社員が若すぎる。問題が多い。どうしたらよいか?

「老害」という言葉はよく耳にしますが、「若害」という言葉はあまり耳にしません。一般に、年をとることはよくないことであるが、若いことはいいことである、という漠然とした通念があるからでしょうね。「若害」は、そういう目で世間を眺めてみると、確かにあるように思います。力のある若い少数の人たちが会社の価値の全部を(自分たちで)生み出していると思っているような場合、担当役員の指示、話をきかずに暴走しはじめます。戦前でいえば、関東軍の青年将校が中央の指示、命令を無視して、独断で兵を動かしたのと似ています。組織の統治システムの要である(1)組織分掌の確立、(2)権限委任規定、(3)文書による命令・報告システム、(4)法令による賞罰統制、などが機能しなかったのです。「若害」を防止できるのは、シビリアン・コントロール、つまり官僚制の実体化であります。

文責:清水 佑三

2004/07/22 307

プロ野球の1リーグ制への動きについてどう思いますか?

よくぞ聞いてくださった、ありがとう、です。野球と戦争の話をさせれば、何日でもやれます。そのくらいの思い入れが二つの世界に対してあります。それはともかく、サッカーJリーグの「地域主義」「脱企業」「正確な観客数開示」「選手年俸の平準化」といった価値観と比較すると、プロ野球オーナー連中の思考形態は古色蒼然としていますね。伝えられる1リーグ制議論は、中身にエキサイティングな「運動性」「未来志向」がまったくないのが気になります。プロ野球の隆盛を築いたのは興行側の智慧や勇気ではなく、王、長嶋らの選手たちのプレーに共感を呼ぶ感動性があったからです。「たかが選手」というものの見方は、社長が「平社員の分際で」というのと同じです。どうしようもない、と思いますが、それと野球という遊びのもつ面白さはまったく別の問題であります。

文責:清水 佑三

2004/07/21 306

よい戦略家には誰でもなれますか?

あらゆることに共通することだと思いますが、エラーをしない、とファインプレーをする、は異なる世界です。ソ連邦の崩壊の原因は、国民を疲弊させてまで、絶対的な(対米)軍事優越にこだわったソヴィエート共産党の国家戦略にあるという説があり、私もそのとおりだと思います。国家戦略構築におけるエラーの例です。一方で、イギリスのマーガレット・サッチャーがとった「小さな政府=民営化」とその受け皿としての「個人株主の拡大=市民参加型資本主義」という戦略は、英国の強さを作った(ファインプレー的)国家戦略だと思います。もちろん、抵抗勢力に勝つための実行力という別な次元の問題はあります。(戦略の)勉強法になじむのは、失敗しないための戦略構築法チェックリストに限られます。小さな政府、市民資本主義の着想は、鉄の女(サッチャー)の知的運動神経の帰結であり、優れた直感にもとづくものだとみます。戦略センスの方は勉強になじまないという意味です。

文責:清水 佑三