人事部長からの質問

2004/09/14 345

古田敦也選手は好きですか?

好き嫌いを超えたハンパではない大人物だとみています。星野仙一の目線も高いが古田敦也の目線も高い。スト回避で右往左往する球団経営陣のレベルではない。古田は「中間管理職として当事者能力を持たない彼らの限界」を鋭敏に知ってしまっています。だから記者会見後の中途半端な握手の要求をその場ではねつけられるのです。目線はあくまで「たかが選手」といい放ったオーナーと呼ばれる人の集団にある。また、この問題に強い関心をもつプロ野球ファンや一般世間の人たちの方を向いていると感じます。神聖な職場を汚す「ヘンなこと」を放置しない強い使命感、倫理感をもっている。こういう人物に人はついてゆくのだとみます。カリスマ性がありますね。野村克也がヤクルトの監督だった時代、よく古田敦也の意見を聞く場面がテレビに映っていました。野村克也が一目おいていた事実は重いですね。政治の世界に入って、将来の日本を背負う人材になるかもしれません。

文責:清水 佑三

2004/09/13 344

ソリューションズって何をいうのですか?

自助具といってもピンと来ない人が多いでしょう。高齢などの理由で筋力が弱くなり、ペットボトルの蓋が開けられない、お餅などの固いものを包丁でうまく切れない、などなどの問題を解決してくれる「障害者用に編み出された器具」をいいます。Googleで「自助具」をひくとたくさんのページが検索できます。目立たないが大きな市場が存在しているように思います。たとえば、「ペットボトルの蓋を開けられない」がソリューションズを待っている状況です。それに対して、こうすれば開けられるようにできる、が「ソリューションズ」です。自助具の発明をいうのです。コナン・ドイルが描いたシャーロック・ホームズ氏は思考の自助具を作る名人だったように思います。自助具を秘密にしたから彼の小説はとても面白いのです。

文責:清水 佑三

2004/09/10 343

出世や報酬で釣る時代は終わったのか?

そうだと思います。そういうものに無関心な優秀層が陸続と入社してくるのが今の時代の特徴でしょう。努力に努力を重ねてよりよい仕事や地位を獲得してきた「達成呪縛」グループからみると、彼らの入社、退社の動機がよくわからない。面接で「勝ちたいと思うグループと楽しみたいと思うグループの葛藤処理に奔走させられた」という体育会幹部経験者の述懐が多い。私などは体育会に入って、なお楽しみたいという「神経」を疑ってしまうのです。それなら何でサークルにしないの?という疑問です。体育会というブランドと楽しみたいの両方のいいとこどりをしているように見えてしまう。会社に入って、楽しみたいといわれるのも同じようなとまどいを感じるのです。末は博士か大臣か、という価値意識の中で育ったゆえでありましょう。自分がだんだん前世紀の遺物のように思えてくるのですね。

文責:清水 佑三

2004/09/09 342

成果主義、実力主義、能力主義の違いを。

よいご質問ですね。特定の価値意識に基づく制度・体制を**主義といいます。成果、実力、能力のどれに比重をおくか、でご指摘のような違いが生まれます。ものすごく単純化していえば、お相撲さんの世界が成果主義です。仮に勇み足、反則、不戦勝だけで全勝しても、優勝の栄誉を手にします。あがってナンボの世界ですね。実力、能力主義の区分は確かに紛らわしいです。プロの世界が実力主義です。たとえば弁護士さんでいえば、訴訟における勝敗は実力差とみられます。それでお願いするときの値段が決まる。プロ野球でいえばブルペンで160キロのボールを捕手の構えたところに投げる投手は高い能力をもっていますが、ここいう場面でそれが出せない限り実力があるとはみなされません。サラリーマン社会は典型的な能力主義社会です。経験=能力という仮説をおいて職能等級の階段を用意し(成果とは関係なく)年次ごとにソロリソロリと処遇をあげてゆきます。これが能力主義です。

文責:清水 佑三

2004/09/08 341

ロシアの北オセチア共和国の惨劇が他人ごとに思えない。

この問題に対する日本の新聞・テレビのスタンスには「とまどい」が見え隠れしています。日本だけでないかもしれません。最近、ル・モンド(フランス)は社説で「シラク仏政権は米国のイラク戦を批判したのにロシアには目をつむっている」と書いています。地続きの隣り村で起こっていることなのに「とまどい」がある。惨劇の根にはチェチェン紛争がありプーチン政権の異様な武力による封じ込め戦略があるのは自明です。さらに遡れば、エカテリーナ女帝による南下拡張政策時の「残酷な併合の手口」が併合させられた民族のトラウマを作った、とみることも可能でしょう。一つの文化が他の文化に対して(力を背景に)消しゴムで消すようなことをすると、積もり積もった恨みをつくり、やがて武装勢力の先鋭化をもたらして惨劇を生む、ということなのでしょうね。私も他人ごとに思えずにこの事件のことを考えています。

文責:清水 佑三