人事部長からの質問

2004/10/15 365

清水社長のかっこよい論をお聞かせ下さい。

私の場合、高校時代に初めて読んでから今にいたるまで、繰り返し、繰り返し愛読している井伏鱒二さんの『駅前旅館』の主人公(生野次平)が「カッコヨイ」と思う人のイメージです。本当にあこがれています。何がどう「カッコヨイ」かですが、(1)いつどんな場所でも殺し文句がでてくる、(2)風呂の中で芸者衆のひとりから「どうせあたいは熱いの」といってつねられる、(3)水無瀬ホテルの高沢(同業)が慰安旅行先(甲州、湯村温泉)で女中のジュコさんを前に「耳とある場所の関係」で出任せをいっているのを愉しそうにきく、(4)ゆきつけの辰巳屋のおかみが自分に気があるのがわかっていながら、わからない素振りをして冗談をいいあっている、…あげてゆくとキリがありません。こういう人になれたらいいなあ、と思って何回も何回も読んでいます。これでいいでしょうか。

文責:清水 佑三

2004/10/14 364

会社の「北朝鮮化」の危険性についてお教えください。

ご質問の補足に「脱北者が増え続けている北朝鮮の現状は、報酬、待遇等が不満で会社を退職する人の増加傾向と重なる」とありました。一党独裁とよくいわれますが、金正日体制はそのものずばりの一党独裁です。一党独裁の構造上の宿命として、「国民が豊かに暮らす」価値よりも「一党独裁が壊されない」価値が統治原則として選択され、資源がその方向に多く使われます。結果として、国民が手にできるいろいろな富がやせ細っていくのだと思います。これがご指摘の「北朝鮮化」だとみます。独裁に反対する人は根絶やしにされます。優秀な人がいても、怖くて何も発言しなくなる。機会利益はどんどん失われ、国力は次第に衰微してゆきます。組織にとってこれ以上の危険はないですよね。

文責:清水 佑三

2004/10/13 363

私生活を犠牲にして仕事をする人について。

中央省庁のキャリア組はある年齢まで、自分の私生活などないかのように仕事に集中します。特に(民間でいう)課長クラスは、国会開催中、いかなる質問にも適切に対応できるように徹底した準備作業を行います。また、予算編成期になると財務省主計官との間での丁丁発止のやりとりを想定し細部まで遺漏のない予算計画づくりに奔走します。限られた人数のなかでやるべきことは決まっているので、手抜きができません。その期間、仕事が終わるのは毎日のように3時、4時になるといいます。大手企業のスタッフ系の人たちもほぼ同じです。こうした人たちは私生活を犠牲にしたと思っていません。自分の使命感が先にあり、選ばれてその使命を果たす場所にいることに強い喜びを感じているものです。それでは私生活は貧しいかといえば、そうではなく猛烈な毎日のあいまを縫って自分がもっとも楽しめることを十分に楽しんでおられるものです。人生を集中して生きている、という感じです。以上がご質問への回答です。

文責:清水 佑三

2004/10/12 362

ほんとうに「適性」ってあるのか。

よいご質問だと思います。アテネオリンピックの平泳ぎで二冠を達成した北島康介選手について、作家の長田渚左さんは「小さくてしかも体が硬い。プールサイドで屈伸運動を見た人はみんなコチコチの体に驚く」「体が柔らかくないと大成しないというのが水泳界の常識。それが誤りだと彼は身をもって証明した」と書いています。14歳の時から北島選手を指導してきた東京スイミングセンターの名伯楽、平井伯昌コーチは、ニッポン放送で羽佐間正雄アナウンサーの質問に「コーチに対する言動をみていると康介はとても臆病で神経質でスポーツ選手としての性格はもっていない」と答えていました。心身ともに適性について疑問を持たれていたのが北島康介選手なのです。私ごとをいえば、およそ人前で話すことが嫌いで性(しょう)にあっていないにもかかわらず年間、相当回数の講演をしています。お呼びがかかるという事実を冷静に考えると合格点は出せているのかもしれません。人前で話す適性がない、にもかかわらず、です。考えるヒントにしてください。

文責:清水 佑三

2004/10/08 361

人を笑わせることは面白いですか?

面白いですね。無趣味な私の唯一の趣味といってよいかもしれません。顰蹙を買おうが買うまいが、笑わせようといつも必死に努力しています。(人が)笑ってくれると本当に嬉しい。どうしてでしょうか、よくわかりません。林家三平師匠はもともと謹厳な人で、高座であれだけ人を笑わせたのに、家に帰るとその反対の人だったと(師匠がこよなく愛しておられた)奥様が何かに書いているのを(昔)読んだことがあります。ことによると私はその反対かもしれません。仕事をするときはそれなりに「真面目」を装っていますが、親しい人といるときはいつも相手を笑わせているような気がします。それがダジャレであることもあれば、音程を外れた歌を歌うことであったりします。面白いからしているのだと思う以外に考えようがありませんね。それともただのひとつのバカなのでしょうか。

文責:清水 佑三