人事部長からの質問

2004/11/15 385

企業にも制服組があるように思う。

おもしろい指摘ですね。最近、陸上自衛隊のある駐屯地のナンバー2の方からお話をうかがったことがあります。(陸自に限りますが)政治に対するフラストレーションはかつてないレベルに達しているそうです。東海沖地震と同じでいつ何があってもおかしくないくらい心理的な歪みのエネルギーが蓄積されている、というのです。イラク派遣において、携行する武器弾薬や攻撃にあった場合にとれる行動をオープンにして、武装勢力と対じするのは、戦闘を職業とする者にとってこれ以上ない苦痛だそうです。よくわかる話しです。制服組の怒りはクーデタとなります。営業とか生産といった現場を今の陸自制服組と対比させて考えるとご質問のもつ重大性が透けて見えます。

文責:清水 佑三

2004/11/12 384

ダメな人事マンの特徴をあげてください。

遅い、まずい、高いでしょうか。遅い、はスピード(に欠ける)よりもタイミングが悪いことをいいます。人事の仕事も司法、立法、行政の3側面をもちますが、いずれの仕事を担当する場合でもタイミングがもっとも重要です。内容の整合性を求める人にこのタイミング音痴がよく見られます。次に、まずい、です。優れた料理人は、味覚だけを問題にしません。店のたたずまい、インテリア、部屋の温度湿度、風とおし、音と光の風情、空気感まで動員しておいしく感じるための外堀をうめてゆきます。次は個々の顧客への創造的な対応です。その顧客のいつもの好み、その時の(顧客の)気分と生理、何もかもを十分によみとって「ひとさら」に自分の考えを表現します。以上がまずさの反対のイメージです。高い、は頭(ず)が高いという意味です。人事マンはつきつめるとサービス業です。頭が高い、は(サービス業者として)失格を意味します。

文責:清水 佑三

2004/11/11 383

「ISO9001」を導入した。社長以下上位者が無関心。どうすればいいのか?

どうしようもないですね。社長は「社員の声に耳を傾けたい、eメールで直接意見をいってほしい」とよくいうものです。それを受けた形で、関心をもっていただきたいと訴えるのです。そうしないとやっていられない、とくだくだしく書くと、普通の社長であれば、わかった、すまなかった、と思うものです。それ以外の手は思いつきません。これではだめでしょうか。

文責:清水 佑三

2004/11/10 382

社内最優秀のヤツを人事にもってきたい。

賢明な路線、選択だと思います。人事マンの夢は、(黙っていても)もうかる仕組みを、次から次へ考え、実行する人たちを自動輩出するメカニズムの構築です。それが企業体にとってもっとも大事であり、それさえできれば永遠にお家安泰だからです。増収増益を長期にわたって続ける企業はそれに近いことが会社としてできているのです。そうではない会社は、社内最優秀の人を営業や生産の現場においてしまうものです。かれらに日銭を稼がせるのは損であります。いくらこう叫んでも、優秀な人を現場におく風潮は改まりません。私たちが明日のこと以外は(実は)信じない民族性のようなものをもっているからだと思います。

文責:清水 佑三

2004/11/09 381

人事に透明性、合理性はなじむのか?

なじまないとみます。結果論としての理屈はつくと思いますが、それはあくまで結果論です。野球を長くみてきて得心がいったことは、監督の投手交代に透明性、合理性はない、という単純明快な事実です。投手交代プロセスが開示され明快な理屈をもっていても、裏目に出ればパアです。やってみないとわからないのです。そのあたりの機微について優れた洞察を残したのは江戸時代の荻生徂徠です。「人を知るとは使ってみて知るなり、使うとはすべてを任せることなり」という有名な言葉を残しています。人事権者のリスクの本質をいいあてていると思います。透明性、合理性が云々できる領域は、プロセスが結果を規定できる世界だけです。人事なかんづく政治においてそんなことはないのです。

文責:清水 佑三