人事部長からの質問

2005/01/26 430

(ゴルフ場の)セーフティ・ボックスは安全ではないですね。

昨年、月刊「文芸春秋」で柳田邦男さんがキャッシュカードのスキミング犯罪を取り上げたときから、この問題には強い関心をもってきました。人ごとには思えないのですね。何一つの落ち度がないカードユーザー(被害者)に対する、カード発行銀行の冷たい態度、姿勢がもっとも気になりました。その銀行が掲げている「顧客を大切にする」という企業理念とは何なのだろうか、という疑問です。その銀行を信頼して長いこと「自分の命の次に大切な財産」を預けてきた顧客への、事件後のむごい仕打ちは、一体、何をまもるためなのか、という強い懐疑です。せめてわが社では(貧しく見えても)実行できる「理念」を掲げたいものだと思うのです。

文責:清水 佑三

2005/01/25 429

クライメット・サーベイの使い方を。

組織におけるクライメット・サーベイは(公害などの)環境汚染調査とよく似ています。普通の人が普通に住むのに適さない劣悪な部署と、その反対に住みやすい部署がある。それを、同じ質問に対する回答を部署別に比較分析して突き止める、がクライメット・サーベイの目的であり方法です。「朝、会社にゆくのがイヤ」「やめてゆける人がうらやましい」「友人に会社のことを話したくない」「トイレがきたない」「かげひなたのある人が多い」などの質問への回答を部署間で比較するのです。こういう質問に他部署よりも敏感に反応する場合、心理環境が汚染されているとみます。次の問題は、汚染の原因をつきとめることです。過去(悪しき伝統)・現在(不良マネジメント)・未来(ビジョンの枯渇)など様々な問題が浮かび上がってきます。

文責:清水 佑三

2005/01/24 428

「自分」って変えられるものですか?

よいご質問だと思います。顔形や背丈のようなフィジカルな部分(ハードウエア)を変えるのは難しいと思いますが、気持ちの持ち方、考え方、それに伴う行動的な部分(ソフトウエア)は変えることができると思います。「バカの壁」を書かれた養老孟司さんはあるテレビ番組の中で、見る→ショックを受ける→考え込む→決意する→壁にぶつかる→苦しむ→必死に動く→できた、というらせん状の階段が「自己変容」プロセスだと語っておられました。ポイントは「感性の入れ替え」ができるかどうかだとおっしゃっておられました。そのとおりだと思うのですね。机の上の勉強では、自己変容はまず無理であります。

文責:清水 佑三

2005/01/21 427

多様性、多様性といいますが何がよいのか?

率直でよい質問ですね。ありがとうございます。多様性とは進化の方向の名です。自衛隊がいるところがイラクにおける非戦闘地域だという論理を借りれば、進化があるところに多様性があるのです。会社次元でいえば、最大の「多様性」問題は、権力層における男女のバランスです。立場上、管理職の人たちに対して話をといわれることが多いのですが、お邪魔すると出席者のほとんどが男性である場合が多い。このことが「異常だ」と思わないとしたらあなたは進化から遠くにあります。同じように日本人ばかりです。それも同じですね。メンバーが異質である集団においては、異質なものどうしで葛藤が生じ、その葛藤を通して「アウフヘーベン(止揚)」能力が(組織に)育まれてゆきます。多様化路線は、内戦になって滅びるか、または米・豪のように強い国が生まれます。

文責:清水 佑三

2005/01/20 426

生え抜き肯定論を。

最近の通念は生え抜き否定論です。内向きの同質集団を形成しやすい、がその理由だと思います。ただ、グローバル企業であるP&Gなどは、生え抜き主義を標榜しています。背後に「価値観の行動化」をうながす上で新卒から鍛えてゆくほうが現実的で有効であるという認識があるとみています。この認識は間違っていないと思います。宗教運動を展開してゆく集団をイメージすればよくわかります。かならずといっていいほどその集団のエリートを純粋培養する「教育機関」を内部にもち、その出身者を長期にわたって組織が幹部として育ててゆきます。結果として「価値観の行動化」をリードするコア人材が輩出される。これが私の生え抜き肯定論です。

文責:清水 佑三