人事部長からの質問

2005/03/03 455

名選手は監督に向かない、といえますか?

言えるように思います。川上哲治、王貞治などは違うのでは、という声が聞こえますが、名前に「治」が入っていて、姓名の力がハンディキャップを埋めているのです。それは冗談ですが、名選手にあってヒアリングをすると、話の内容・関心が際立って自分のワザに向かっているのに気づきます。ワザの開発でいかに苦労してきたかを語るのです。思うようにならない自分の精神と肉体が、その人たちにとって最大の関心事なのですね。他人のことにかかわりあっている余裕がない。鬱屈している補欠選手の気持ちや勝っているのに観客がそっぽを向いていることなど眼中にない。監督業への準備をまったくしていないのです。古田敦也選手だけは例外的な存在で、選手会に属するすべての選手のこと、プロ野球ファンの人たちの気持ちなどを一選手でありながら考え続けているように思います。いきなりコミッショナーにしても勤まる。間違いなく名監督になるでしょう。こういう人は滅多にいません。

文責:清水 佑三

2005/03/02 454

犬もぼけますか?

ぼけ、は周囲に与える影響の度合いによって、「軽度」と「重度」に二分類されます。軽度とは影響の範囲が自分に限られ、周囲をまきこまない場合です。ちょっとした度忘れなどが該当します。重度とは影響の範囲が自分以外に及び、周囲がそれによって迷惑をこうむる場合です。さがしものが見当たらないとだれだれが盗んだ、と思い込み、それを人にいう、などの行動が該当します。犬のぼけも同じで、軽度だとすぐ前に食べたことを忘れて、また、食べたがるなどは、影響の範囲が小さいので軽度ですね。ところが人に噛み付いてはいけない、という教えを忘れて噛み付くようになれば重度で、何らかの対応が必要になります。蛇足ですが、私のぼけはいよいよもって重度になりつつあります。経営成績が思わしくないと「人のせい」にしてしまうのですね。

文責:清水 佑三

2005/03/01 453

「顧客志向」って何をいうのですか?

誰のことを(一番よく)考えて仕事をしているのか、を自問自答してください。自分のサービスの受け手のことを考えて仕事をしていると答えられますか?自分のサービスの受け手の人たちが喜んでくれる姿をみるのが自分の生きがいだとはっきりといいきれる人がいたら、その人こそ「顧客志向」の人です。世間を広くみると、学校の先生、よくできたお医者さん、看護・介護にあたる人たち、旅館のおかみさんなど、いたるところで(その人たちに)出会うことができます。サービスの受け手を定義しやすいのです。逆に社長業を考えてみましょう。社長サービスって受益者がうまく定義しにくいのです。自然に「顧客志向」性が弱くなり、自分志向に陥ってゆきます。

文責:清水 佑三

2005/02/28 452

指示が細かすぎる上司への対処法を。

荻生徂徠は『政談』の中で、「人を知るは使ってみて知るなり、使うとはすべてを任せることなり」と断じています。そのとおりだと思います。指示が細かすぎる上司は、人を知る機会が(永遠に)もてないことになります。結果として、(よい台本があったとしても)キャスティングができません。聴衆を感動させる優れた舞台興行を演出できない、となってゆきます。プロジェクトリーダーには不向きなので降りてもらうべきです。

文責:清水 佑三

2005/02/25 451

興奮と感動の違いを。

よいご質問ですね。回答するパッションがわきます。集合論的にいえば、感動は興奮という全体集合の中の部分集合です。喩えを使えば、犬も猫も興奮しますが感動したとは言いません。また、性的興奮とよくいいますが性的感動とはあまり言わないです。このあたりに(二つの違いを)考えるヒントがあるように思います。感動は、人間の営み、特に文化、文明の所産に対する知的興奮をいうのだと思います。スペイン北部のアルタミラの洞窟に描かれた彩色動物壁画は、見る人たちに深い感動を与えます。宮部みゆきの『ぼんくら』『日暮らし』の世界もまた同じです。ここからが私の主張ですが、「顧客を興奮させる企業は一時期栄えるが長続きしない。顧客を感動させつづける企業は『ブランド』という末代までの栄誉を手にする」。

文責:清水 佑三