人事部長からの質問

2005/07/22 550

不安と怯えの違いを教えてください。

よい質問ですね。こういうふうに言葉の違いに敏感な人がほんとうの意味で「考える人」です。ご質問への回答ですが、仕事ぶりがしっかりしている人に共通するのは「不安」を人よりも多く、自分の傍らにおいて仕事をしていることです。不安症候群を隠し持っているのです。ところが、それが怯えに転化した瞬間、仕事ぶりがおかしくなります。何でもないことを見落として大きな損害や迷惑を周囲に与えたりします。車の運転でいえば、精神は安定しているが、事故を起こさないために細かい情報をこちらからとりに行く状態、これが不安です。事故を起こす自分をよく知っているから成り立つ話です。怯えはそうではないです。パニック状態を指します。精神が不安定になり、周囲が見えなくなる。事故を起こす確率は、ものすごく高くなります。要約すれば「不安」は精神の備え、構えをいい、「怯え」は精神のある状態をいいます。いつも不安をもって仕事をすることです。

文責:清水 佑三

2005/07/21 549

清水さんは「スローライフ」していますか?

スローライフの定義ですが、「急がない、頑張らない」でいいのですか。そういう意味に限定すれば、私は生まれる前から「急いでいた、頑張っていた、ハングリーな人」です。何かしらん、もののあわれを感じますね。ただ、一度だけ(30代の終わりのタイミングですが)マレーシアのクァンタンという海浜リゾートで、ひとりで一週間近く山口百恵のカセットテープを聞きながら日がな陽にあたっていたことがあります。そのときに買った民芸品が手元にあるので、そうか、クァンタンで過ごした時間は、夢ではなくて現(うつつ)だったのかと安心したりしています。スペインのNAVACERRADAというスキー場にいってただのんびりとひとりでスキーをやっていた時期もありました。ことによると「急いでいた、頑張っていた、ハングリーな人」というのは間違った自己概念でほんとの出身地はスローライフ村かもしれません。

文責:清水 佑三

2005/07/20 548

企業文化についてもっと勉強したいが。

企業文化の勉強をされる前に「価値観」という問題を調べられることをお奨めします。私はある人に言われて「欲望と道徳の社会学」とサブタイトルされた見田宗介の『価値意識の理論』(弘文堂)をずいぶん昔よんでいろいろと考えさせられました。特に、第四章、第四節「3」の「価値変容のメカニズム」の部分がおもしろく注意してよく読みました。その中に「価値体系の一挙にして全面的な転換はその契機として何らかの不安・恐怖・絶望を必要とする」という言葉があります。まさにそのとおりなのですね。ちなみにこの本の第四章は「文化の理論における<価値>」と題されています。その他、Schwartzの価値観モデル(1992)が優れているとエス・エイチ・エルの(イギリスの)研究者たちがいっています。Schwartzについては知りません。ご参考までに。

文責:清水 佑三

2005/07/19 547

採用=教育、とみてよいですか?

まさに私の持論です。採用、教育、結婚みな同じだと思っています。JSバッハの二度目の奥さんが書いた伝記の中に「セバスティアンの演奏を聞いて以後は、この地球上で私が他の男を望むことは不可能になってしまいました。そして彼も(私の聞き方をみていて)この娘を貰おうと内心で言っていました」(アンナ・マグダレーナ・バッハ『バッハの思い出』(講談社学術文庫)という表現があります。ここにすべてがあると思います。こうした出会い、邂逅は「作品の演奏」という機会がなければおよそ存在しえないのです。採用、教育の職掌にある者の仕事はかかる意味でのすぐれた演奏会の設営です。

文責:清水 佑三

2005/07/15 546

小泉さんが長期政権を維持できているのは?

マスコミは日本に限らず反ブッシュ、反小泉ですが、国民感情は日米ともに必ずしもそうではない。小泉さんのどこが受けているかといえば、(1)靖国で譲らない(2)北朝鮮に非を認めさせた(3)拠出に見合った発言権を国連に求めている(4)アンタッチャブルとされた銀行、郵政、道路、派閥に確実に風穴をあけた(5)日本を守るといっている米国への信を貫いている、等々でしょうか。小泉さんのおじいさんはその昔、入れ墨大臣といわれた人です。小泉さん自身も博徒に似た説明ぎらいの一面をもち「一発勝負」に出るところがある。これなども面白いのですね。時間の許す限り彼の舞台をみていたいというのが(声なき声といわれる)国民感情でしょうか。

文責:清水 佑三