人事部長からの質問

2006/01/26 673

ヒューザーの小嶋社長とライブドアの堀江前社長、共通するものはありますか。

まったくないと思います。テレビに映る小嶋社長からはパーソナリティ障害者のイメージを受けますが、堀江前社長からはその印象は受けません。むしろ、類い稀な才能、という印象を一貫して受けてきました。サッカーでいえば、(証券取引法上の)イエローカード、レッドカードの解釈において、国権と矛盾するものが堀江前社長側にあった、というのが私の理解です。逮捕直前の取材に対して、堀江前社長が「自分はファイナンスのプロではないので細かいことはわからない」と話したそうですがそれは違います。彼こそファイナンスのプロ中のプロだと思います。株式市場の健全性が資本主義の根幹である、ルールからの逸脱に対して厳しくあたるという国権の論理は当然のように思います。堀江前社長がどこがどのように逸脱なのか論争しようというのもわかりますが、その間に彼の財産は消滅してしまうでしょう。

文責:清水 佑三

2006/01/25 672

会社のマネージャーにお勧めの本を教えてください。

何回も同じことを言って恐縮ですが、『文明論の概略』(福沢諭吉)をお勧めします。岩波文庫にあります。この本の何が一番よいかといえば、思考のスピードをつけてくれるところでしょうか。文章にテンポ、リズムがあり、サーフィンのようにして文章の波に乗ってゆくと、彼の思考のスピードに慣れてゆきます。気がつけば騎手の女房という感じで、いつのまにか自分の思考のスピードが速くなっていることに気づかされます。それともう一つ、喩えを使う能力という点で参考になります。『文明論の概略』は比喩辞典といってもよいくらい比喩の多い本です。マネジャーの仕事は、チームの動きにシナジーを与えることです。言葉を使ってやらざるをえない。そういうときに「わかりやすい喩え」はなにものにもかえがたい武器です。福沢の喩え術をマスターすれば、マネジャーの暖簾を張る上で怖いものなしだと思います。

文責:清水 佑三

2006/01/24 671

歴史上の人物で誰に惹かれますか?

幕末の会津藩主、松平容保に惹かれます。特にNHK特集『街道をゆく・会津のみち』に取り上げられた松平容保が時の幕閣から京都守護職就任を要請されたときの(幕閣との)やりとりは私の想像力を強く刺激します。企業の中に身をおくと容保がたったと同じ窮境の連続だと思うのですね。いつか真山青果の「将軍、江戸を去る」のような感じの芝居の台本を書きたいと思っています。15年前に会津若松を訪ね白虎隊の事跡をつぶさにたどりました。官軍の残酷さに背筋が寒くなるようなショックを覚えました。忘れられないですね。私の中で松平容保はもっともっとたくさん調べて想像でつきあってみたい人です。

文責:清水 佑三

2006/01/23 670

職種の数だけ職務適性があるのか?

よいご質問ですね。添え書きにあったように御社のような大製造業の職種数はどこでも100を超えると思います。その100について職務適性のようなものがあるかというのがご質問の主旨ですが、私はあると思っています。ただ、(化学の)元素のような働きをする(根元的な)適性の数は少なくせいぜい10個あるかないかだとみています。その元素がつきとめられれば、その組み合わせで100種の職務適性を定義することができます。私の構想では、価値観3つ、知能タイプ3つ、行動スタイル3つの元素的適性があり、その組み合わせでほぼ全部の職務適性は特定できるとみています。それぞれの詳述はここでは省かせてください。

文責:清水 佑三

2006/01/20 669

小さな政府、と小さな人事部と同じだろうか?

朝のラジオ番組を聴いていたら、「小さな政府論」こそ姉歯元建築士の偽装問題の淵源であるという主張を展開した評論家がおられました。建築確認を出す審査機関を「民」に移したゆえにこうなったというのです。このタイプの議論を我々のご先祖は「クソもミソも一緒」といいました。異なる次元のものを混ぜて無知の聞き手を誑かす手法ですね。ご質問に戻りましょう。回答はイエスです。オーケストラでいえば、楽譜と指揮者はアウトソースできないが、会場や演奏家は、演奏会のつど市場で選別、調達して臨んだほうが、同じレベルの演奏会の入場料を安くできるという意味です。小さな人事部において、いかにして「よい楽譜」「よい指揮者」を定義し、選別するかだけが難しくかつ重要であります。

文責:清水 佑三