人事部長からの質問

2006/02/23 693

ホリエモン批判の大合唱ですね。

マスコミは怖いと思います。思いだすのは加賀乙彦の小説『帰らざる夏』です。そこに描かれた昭和20年8月15日前後の陸軍幼年学校生徒たちの対立は興味深いものがあります。「神州不滅」を声高に叫んでいた多数派「大和魂」グループが、敗戦の日を境に掌を返して軍部の戦争責任を追及しはじめるのです。ホリエモンを糾弾するマスコミの論調にもそれに近いものを感じます。加賀乙彦さんのこの本を読んだときにずいぶんと考えさせられました。この先の生き方として、つねに少数派でありたいと思いました。生まれつきの性分もあったと思いますが、この小説が自分の生き方に与えた影響は大きいと思います。

文責:清水 佑三

2006/02/22 692

トリノオリンピックで勝てない理由は?

わかりません。メダルの数=国威発揚度、と考える国だったら、担当大臣の首が飛ぶかもしれませんね。ステーツ・アマチュアが跋扈した時代を思い起こします。ただ、このオリンピックから、フィギュア・スケートの審査の方法が変わったというテレビ中継の解説には職業柄つい耳を欹(そばだ)てて聞いてしまいました。全体を通して直観で形態美(インパクト)を判定する前回までのオリンピックの審査のやりかたから、個別のワザの難度・できばえなど、観察ポイントを細かく分けていって得点を算出し、それを集計して総合点を出すやりかたに審査の仕組みを変えたのだそうです。アセスメントという専門領域での議論と(議論の内容が)酷似しているのですね。(能力)アセスメントの世界においても観察・記録・分類・集計というプロセスで評価する英米系流儀と、全体、直観、インパクトを媒介にして評価する非英米系流儀があり、どちらがよいか、いまだに議論の決着がついていません。

文責:清水 佑三

2006/02/21 691

懲罰規定の運用について悩みがある。

ご質問には「システムの運用である社員が起こしたあるミス」について、具体的な事例が詳細に説明され、顧客が受けたダメッジを勘案すると、ご自分の立場上、それなりの懲戒処分を用意しないといけないと思う、しかし、同期入社で他の部署に行った人と比較し、ミスをひき起こした人が格段に劣った仕事ぶりであるとは到底考えられない。ミスの内容はその人の不注意としかいいようがないが、深夜残業や休日出勤といった背景も無視できない。こういう問題をどう考えたらよいのか、と添えられていました。まったくおっしゃる通り、悩ましい限りの問題だと思います。懲戒規定は、多分、そういう(一所懸命に仕事に励む)善意の人のミスを想定していないのではないかと思うのです。率直にいってこの問題は、「ソリューションズ」がイメージできません。私が質問者と同じ立場であった場合、同じようにひたすらに困ってしまうと思うだけです。ごめんなさい。

文責:清水 佑三

2006/02/20 690

今もっとも注目している会社は?

グーグル株式会社ですね。注目している理由は、私が一番お世話になっていながら、私からお金をとろうとしないゆえです。資本主義が根拠にしている「何か」を超えた根源的な発想が背後にあるとみています。それとグーグルのトップページのシンプルさです。ほとんど何も書いてなく、使う人が書き込むだけになっている。こんなホームページはほかにない。ユーザーにかける負荷が最少で、ユーザーが得る利得が最大になっている。奇蹟だと思います。グーグルの社是は「独自の検索エンジンにより、世界中の情報を整理し、アクセス可能で役立つようにすること」だそうです。私が勤めている会社の社是「楽して、儲けて、尊敬される」と比較するとどうにも格が違う。

文責:清水 佑三

2006/02/17 689

制度の中身より運用という事ですが、さらに大事なものがありますか?

あります。「ひと」です。運用の妙まで含めて、評価制度がどんなによくできていても、評価する人が(仮に)人種差別主義者である場合、よく働く外国人スタッフは浮かばれません。このあたりを徹底して考えてゆくと、よい人を得ていないがために制度の力にすがるのだ、と気づきます。会社とか組織は、上から数えて10人の人たちがしまっていれば、自然にしまるものであります。反対にトップテンがしまらないと全体がダメになります。

文責:清水 佑三