人事部長からの質問

2006/03/02 698

うつ病になってしまった社員に対しどう対応すべきでしょうか。

「産業医はころあいを見て、元の現場に戻せというが」というふうに書かれておられますが、それも選択肢の一つとしてある、ということでしょう。それを許す環境、条件がない限り、裏目にでることもありえます。お尋ねのうつ病になった社員への対応ですが、何よりもなおってもらうことが先決です。なおってもらうという言葉は正確ではないかもしれません。症状を抑えてもらう医療処置が最優先されるべきです。うつ病者はあまりに苦しいからです。わずかに残ったエネルギーで「死」を選択するというのは「死」のほうが苦しくないと思うくらい苦しいからです。何も食べられず、どんどん痩せてゆき、どうしても眠れず、ただひたすらに(動物として)息をする毎日は形容を超えています。私の家族がこの病気でとても苦しみました。明日は我が身といつも思っています。人様にアドバイスする心境にはなれません。

文責:清水 佑三

2006/03/01 697

仕事を楽しめる人を見つけるコツは?

「どうすればストレス問題とも無縁でしかも成長も期待できる人を見つけることが可能ですか。」 というコメントが一緒に書かれていました。選考時に(そういう人を)発見するノウハウをというご質問だと理解します。そんなヤツはいねえよ、もしいたら採っちゃあかん、というのが私の正直な答えです。去年までヤクルト(スワローズ)を率いた(留萌出身の)若松勉さんが選手を引退したときの記者会見のことを今でも鮮明に覚えています。「野球をやってきて楽しかったですか?」という記者の質問に、長い沈黙のあと、「苦しかった。毎日を凌ぐのがほんとうに大変だった。」 とボツンと語ったのです。いまも私の脳裏を去りません。それが実績を残す人の姿です。もうやめよう、もうやめよう、こんな苦しい毎日はいやだと思いつつ、自分に対するメンツで凌ぎつづけ、現役を退くときになって振り返ったら高い実績が残ったのです。仕事を楽しめる、は大空を鳥のように飛ぶ、と同じで夢であります。

文責:清水 佑三

2006/02/28 696

ピカピカの早期選抜組の名前はあがった。これから何をすればよい?

昨日と同じ方からの質問です。指導層を早期に選別し、必要な教育やキャリアパスを与えるという考えかたはありとあらゆる組織に共通する問題意識の一つだと思います。旧日本軍でいえば、幼年学校→士官学校→陸大(兵学校→海軍大学)を通して優秀とみなされた人たちが、ご指摘の早期選抜組にあたり、早い年代で大本営の作戦参謀としての機会を与えられました。例として、戦後、議員として活躍した陸軍の辻政信、海軍の源田実などの名をあげてもよいでしょう。ただ、そういう早期選別・抜擢の考え方が何を生んだか、私は先の戦争の悲劇をみればよくわかると思っています。組織を私物視してよいという意識を早期から長きにわたって持たせるのは百害あって一利なし、だと思います。

文責:清水 佑三

2006/02/27 695

社内に教育・研修部門をおく必要はありますか。

「発展途上の会社です。教育部署をつくれというトップの意向で立上げに向けて準備が始まっています。インターネットを通じて多くの有益な情報が得られる今の時代、何をめざしてどういう部署を立ち上げればよいのか正直いってよくわかりません。」 と添え書きされていました。正直なよいご質問だと思いました。私の意見は、それぞれの部署がそれぞれの部署の仕事にまい進して過不足がない状態の場合、特にその手の(会社)部署を新設する理由はないと思います。部署を超えた大戦略をもち、そのために部署間の連絡が頻々と必要になると、「社内言語」を用意しないと意思疎通が思うようにできなくなります。そういう社内言語を普及させる部隊がご指摘の研修部署だとみます。英語学校みたいなものです。例をあげると徳川幕府の参勤交代(定期江戸詰め)です。あれは藩主間で共通語をもたせ、藩主の教育をするために設計されたものだと思っています。

文責:清水 佑三

2006/02/24 694

マネジャー職にとって「分析力」は大事な能力でしょうか。

大事だと思います。その理由は、マネジャー職は説明責任が伴うからです。経営職も同じです。長嶋茂雄さんと野村克也さんを比較するとわかるのですが、バッティング理論を展開するのはもっぱら野村克也さんのほうです。長嶋さんは「来た球をバシッと打つ」だけです。そうすると「球はビューッと外野席に消えてゆく」のだそうです。そのとおりかもしれないが、後輩指導には不適切な表現です。それと比較すると、野村克也さんの三段論法、@ボール球に手をださないAコース、球筋別に打ち方を変えるB次にどういう球筋が来るか見抜く、は説得力があります。野村克也さんがもつこうした「ものごとを分けてみてゆく」性質が分析力の正体です。マネジャー職の人がそれをもっていた方が、上司、部下、同僚、利害関係者にとってわかりやすい、という意味で大事だと申し上げます。

文責:清水 佑三