人事部長からの質問

2006/03/16 708

専門商社の営業現場に20年いました。このたび人事部長を拝命し戸惑っています。座右におくべき至言はないですか?

荻生徂徠の言葉をおくりましょう。少し長くなります。今の用字法におきかえます。「国を治むる道は人を知る事、第一に肝要なり。人を知ると言うは、ともかく使ってみて知ることなり。左様なくて、わが眼鏡にて人を見んとせば、畢竟わが物好きにあいたる人を器量ありと思うなり。これ、愚かなることの至極なり。(略)人の智は様々の難儀苦労をするより生ずるものなるに、左様なること無ければ、知恵の生ずべき様なし。乱世の名将は生死の場を経て、様々の難儀をしたる故、知恵あるなり」『政談(巻の三)』(岩波書店、日本思想体系)。難儀苦労した人を登用し結果をみてさらに重用せよといっています。

文責:清水 佑三

2006/03/15 707

社員の精神力の底上げをしたい。何かいい手はないか。

広辞苑をひくと、「精神力」は能動的、目的意識的な心の働き、とあります。砕いていえば、気力のようなもの、と思って間違いないでしょう。社員全体の気力の底上げをしたい、何かいい案はないか、がご質問の意味あいだと考えます。回答しましょう。組織はトップの人を自然にコピーするものです。トップの人が無気力な場合、構成員の気持ちは萎えてゆきます。それゆえ、トップに誰よりも元気な人、気力が横溢している人を持ってくる、が第一手です。次はその次の階層の人たちです。この人たちに同じように組織内で最も元気な人をもってくるが第二手です。気力主義でピラミッドを構成するのです。類は友を呼ぶ、といって似た者どうしの結社にちかづきます。気づいてみればいつのまにか元気な会社になっています。

文責:清水 佑三

2006/03/14 706

女性管理職が少なすぎる。現場推薦リストにあがってこない。どうしたらよいか。

「人事改革各社の事例」を書くために毎週かなりの数の新聞記事に目を通しますが「女性管理職問題」を扱う新聞記事の多さに驚かされます。大企業は例外なくこの問題で悩んでいるのだと思います。社員全体の男女構成比と管理職のそれとで著しいアンバランスがあり、それが長期間固定しているのですね。最大の理由は、会社という「虚構の城」に夢を託すことができる男性性と、そんなものに夢を託せない女性性との生物学的な差にあるとみています。このあたりの分析はピーズ夫妻の名著『話を聞かない男、地図が読めない女』に譲ります。生物学的にその差を埋められないなら、「虚構の城」の方で自ら変容すればよい。虚構だから女性性が忌避するのです。虚構をやめて手でさわれる城にすれば、ボードメンバーの男女構成は激変するでしょう。

文責:清水 佑三

2006/03/13 705

できる人材ははっきり言って使いにくい?

松井(秀)とイチローの比較をすると面白いですね。ともに「できる人材」ですが、メジャーリーグ監督からみた彼らの「使いやすさ」では違っていました。鈴村裕輔著『MLBが付けた日本人選手の値段』(講談社+α新書)によれば、松井はトーリ監督からみて使いやすく、イチローは(ピネラ監督にとって一時期)使いにくかったようです。つまり「できる人材」イコール使いにくいというわけでは決してないです。問題はその人がもつ自己概念です。自分はできると自分で思っている人ほど、それよりも格落ち(だと自分には思える)人からやりかたを指図されるとふてくされた態度をとります。要は(自分で自分を)できると思っている人は確かに使いにくい。ただ、謙虚でありながら「できる人材」はこの世にゴマンといます。

文責:清水 佑三

2006/03/10 704

出来上がった人を採るとロクなことがない。発展途上の人はずっと発展途上。どうすればよいだろう。

お話しはよくわかります。出来上がった人を中途で採ると貰う分だけやるが、それ以上はやらない。加えて生え抜きの不出来組を育てる興味がなく、次の転職ばかり考えている。一方、生え抜きの発展途上組は低いレベルで滞留し続ける。右を見ても左を見ても真っ暗闇ですよね。正直な嘆きだと思います。弱いチームの監督がぼやくのはまさにそこです。しかし、中にはそこからスルスルスルと抜け出すチームが出てくる。早稲田大学ラグビー部のこの5年間がそうです。個々人の成長とチームの成長が完全に同期していた。この同期を演出した前監督の清宮克幸さんの考え方に秘密があります。研究されれば一筋の光明が見えるかもしれません。

文責:清水 佑三