人事部長からの質問
降格制度をつくったが運用されていない。
身分はいじるな、職制をいじれ、というのが私の年来の主張です。身分というのは、上下の格づけを伴った(原則)固定的なものです。普通は、俸禄(処遇)とリンクされています。「門閥制度は親の仇(かたき)でござる」と福沢諭吉が憤慨した家格(家柄)は身分のわかりやすい例です。徳川政権でいえば、譜代(大名)は身分のカテゴリーで、関ヶ原以前からの徳川の家臣に付与されました。3万石以上の譜代の中から行政能力の高い人が老中に登用されました。「老中」は職制名です。身分と職制はつねに紐づけられていました。明治以後、会社組織が生まれ、江戸時代の組織論がそのまま引き継がれました。理事(身分名)以上から部長(職制名)を任用する、などがその名残りです。身分制は職能等級制度と名前を変えて現存しています。さて、ご質問ですが、降格制度の設計にあたっては、職制に限定して上げ下げすべきです。身分(俸禄)をいじると、いじられた方の忠誠心が落ちます。
文責:清水 佑三
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