人事部長からの質問
小説と映画って全く世界が違いますよね。
「映画好きな清水さんにお尋ねします。原作を読んで面白いと感じたのに、映画化され期待して観たらつまらなかったと思うことがしばしばあります。原作の良さが死んでいるのです。この点についてどう思われますか。」 というご質問です。のんびりした質問です。ありがたいです。映画好きといわれれば確かにそうかもしれませんね。映画を見ては泣いている、が私の日常です。それはともかく、ご指摘のことを痛感したことがあります。水上勉原作の『飢餓海峡』です。小説と映画がそれぞれ全く違う面白さを作っているのに喫驚したことがあります。それぞれがそれぞれにとても面白かった。映画では、三國連太郎と伴淳の演技のうまさにひきずりこまれました。ある曲をこの演奏家はどう演奏するか、映画はその楽しみが主体だと思います。原作(小説)だと、人の不思議、人の世の不思議を、無理やりのぞきこまされるのがたまらないです。文章力に秘密がありますね。
文責:清水 佑三
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