人事部長からの質問

2003/07/29 67

社外取締役制度の本質が知りたい。

「文民統制」という言葉があります。軍人に対して、非軍人が指揮・統治するという考えかたです。日本国憲法第66条にその原則が明確にうたわれています。この「文民統制」が社外取締役制度の立法精神です。率直に申し上げますが、私は「文民統制」という考え方がよくわからず、長い間、考え続けてきました。軍事のことを知らない人が軍事のことを知っている人を指揮するって本当にありうるのだろうか、という疑問です。営業のことを知らない人が営業部のことに嘴を挟むのと同じです。やがて、法曹の世界における陪審制度に思い至りました。法律を知らない市民のほうが、法律を知っている裁判官よりも、よりよく裁くことができる、という仮定が陪審制度の根底にあります。このことは、法は誰のものか、という問題に直結しています。社外取締役制度は会社公器論にそのまま直結します。会社は、社会のものであって、そこで働く人のものではない、という考え方です。ましていわんや株主のものでもありません。「私物化の排除」が社外取締役制度の本質であり、政治における民主主義にほかならないと気づかれると思います。

文責:清水 佑三