人事部長からの質問
男女の雇用機会均等論についてどうお考えか?
1992年に上梓した「嘘つきのススメ」の中で、「人間の社会を広くみれば、当たり前のことが当たり前であるべき方向へ少しづつ進んでいる」と書きました。福沢諭吉と同じ文明進化(肯定)論です。男女の雇用機会均等論は「当たり前」のことであって、わが国の文明が少しまた少しとその方向に動いている姿を見るのは慶賀至極のことです。ただ、一方で、ピーズ夫妻の名著『話を聞かない男、地図が読めない女』がいう性差が厳然と存在することも事実です。人事部長としてもつべき見識は、雇用機会均等を保障する制度を整え厳正に運用しつつ、他方、採用・配属・登用・処遇にあたって、オープンエントリー、フェアな選考、説明責任の履行を完全実施することです。その結果、ある仕事について男女比率がどちらかに偏ったとしても、それは雇用機会均等の精神には背きません。雇用機会を公平に与えるプロセスの保障が雇用機会均等の精神そのものです。結果の保障を先に考える考え方は本末転倒で会社を弱くします。
文責:清水 佑三
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