人事部長からの質問
シミュレーションの効用を教えてください。
東条英機側近とされた星野直樹といっても知らない人が多いでしょう。ダイヤモンド社のパーティで私は直にこの人の謦咳に接したことがあります。今から40年近く前です。その(企画院総裁)星野直樹が初代の所長事務取扱いとなって昭和16年4月1日に発足した「総力戦研究所」は、その年の夏、第1回の総合戦机上演習をおこなって、日本必敗の結論をだしました。机上演習の指揮をとった飯村穣陸軍中将は、バリバリの軍人でありながら東京外語に在籍したことがあり、トルコ陸軍大学でフランス語を講義したくらいの知性派です。彼の影響か、総力戦研究所は自由にものが言える雰囲気だったそうです。ここでいう机上演習がシミュレーションです。事象をもって事象を語らしめる手法です。ために日本必敗というタブーに近い結論を得ることができました。歴史はこの机上演習の結果が正しかったことを示していますね。
文責:清水 佑三
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