人事部長からの質問

2003/04/30 5

営業的には大変なやり手なのですが、社内の人に対しては、「人をバカにする」「態度が悪い」などと評判が悪い人がいます。どうしたらいいでしょうか?

かりに、こういう人を排除したとします。果たして企業として成り立つのかどうか、です。成り立つのであれば、何らかの手段をもって、(ご指摘の人に)やめてもらうように仕向けるのが正しいとおもいます。成り立たないのであれば、会社のほうが我慢すべきです。そうはいっても公害的な存在なのでしょうから、実害防止の手をうつべきです。こういう時に有用なのが360度評価法といわれる手法です。名指し批判データを全部署で組織的にとる試みです。多分、この人については、「チームワーク」「協調」「協働」といった項目が悪く出るはずです。このデータをもとに、社外の(フィードバック)専門家の力をもとに、猫の首に鈴をつけてゆくのです。社外のプロは、このためにあるとおもってください。上役でさえ、うまくいえないことを適切に伝えてくれます。より高い地位を目指している人であれば、フィードバックを受けた翌日から言動が一変してよい方向に変わります。

文責:清水 佑三

2003/04/28 4

文句が多いが仕事はそれなりにやる社員の操縦方法を教えてください。

いいじゃないですか。文句をいうのは「排泄行為」です。周囲で「臭い消し」を買って常備しておけばそれで済む話です。怖いのは、ご指摘と反対の人です。文句をまったくいわない、会社のことを好きで好きで仕方がないとおもっている。いい仕事につけてもらってありがたいとおもっている。しかし、仕事の成果はまったく出ていない、こういう社員が困るのです。この人のチームワーク(協調性)が優れている場合、ほんとにどう扱っていいかわからないのです。こういうタイプの人を排除する仕組みをつくらねばならない、が「成果主義」です。一方、こういう人を大切にして、目いっぱいムードメーカーとして活躍してもらおう、が「家族主義」です。どちらのスタンスをとるかで、扱いが180度変わります。私見をいえば、会社の余裕があるのであれば、そういう人を可能な限り大事にしたほうがよい、です。

文責:清水 佑三

2003/04/25 3

厳しい数字目標がない人事部(長)は楽だねと営業部(長)からいわれました。

逆でしょうね。数字目標がある営業部長は(数字があるから)楽でいいね、と言い返してください。そのココロは、数字で成果を測れる営業の世界のほうが、そうでない世界よりもよほど単純で取り扱いが簡単なのです。ところが、わが社の社員の意欲と能力の総量を増やせと社長からいわれた人事部長がいると仮定してみてください。およそ、雲をつかむような課題を与えられたわけです。人の意欲にしても能力にしても、言葉として何気なく使っていますが、果たして実在する何かなのか、よくわかりません。ことによると誰かが言い出して、一人歩きしている虚妄かもしれません。「気のせい」だけの世界なのかもしれません。それを捉えるためのワナを作ろうとしても実体がはっきりしないので、決して楽ではありません。適材適所なるものも同じです。営業ってほんとに楽だよな、数字があるから、は実感です。

文責:清水 佑三

2003/04/24 2

人事部長に対してお勧めの趣味ってありますか?

道楽の世界をお勧めします。趣味と道楽の違いを述べよといわれると難しいのですが、道楽は趣味の中でも人を耽溺させる力をもつものです。女道楽などがその代表でしょうか。身の破滅とセットになっている趣味を道楽というのです。私の好きな志ん生師匠は、古道具に凝っていて、好きな道具が目に入ると借金して買ってしまって、そのために食べるものにも不自由していたそうです。あちらたてればこちら立たずの人事部長という稼業は、道楽に耽溺しないとやっていけないのでないでしょうか。道楽の中でも身の破滅度がそれぞれ違います。危険度が増すほどに耽溺効果は強くなります。この道楽がもし表にでれば、自分の社会人としての生命は絶たれる、というような強いインパクトをもつ道楽がよいです。何でもよいです。道楽のもつスリルとサスペンスが仕事上のストレスを小さなものに感じさせるはずです。

文責:清水 佑三

2003/04/23 1

問題社員に退職願いを書かせるノウハウを教えてください。

ある人が、問題社員という烙印を押されて、支払われていた給与を止められる(退職させられる)ことは、社会的にみれば「刑罰」の履行です。そうしてよいかどうかは、それに相当する行為があったかどうかで決まります。したがって、会社の意思としてある社員をやめさせようとおもう場合は、次のような司法手続きの基本を踏む必要があります。

  • 問題とされる行為を特定する
  • その行為が(就業規則上の)勧奨退職事由に該当する
  • 本人がその指摘を受け入れる
  • 労働組合や職場の同僚が同じく受け入れる

一連のこうした手続きを踏まない限り、企業の社会的責任として、問題社員に退職願いを書かせてはいけない、というのが私の見解です。

文責:清水 佑三