人事部長からの質問

2007/04/06 968

春に襲う身を切られるような寂寞感の正体は?

「いつだったか、清水さんは秋のさびしさについてこたえておられました。春に感じるさびしさの正体はなんだと思われますか。秋よりも痛切です。」というお尋ねを戴きました。名作『檸檬』を書いた梶井基次郎という短命の作家をご存知でしょうか。彼の『桜の樹の下には』という作品に、桜の樹の下には死体が埋まっている、という表現があります。西行さんは「ねがはくは花の下にて春死なんその如月の望月のころ」という名歌を残しました。いずれも満開の桜に「死」を連想しています。私の家にも数本の桜があり一本のしだれ桜は今日が満開です。拙作を披露して回答にかえさせていただきます。…「きのうけふちりてかへらぬはなのありきみのかほりをわれわすれめや」

文責:清水 佑三