人事部長からの質問
脚下照顧/片言隻句/謦咳といった熟語をどうやって覚えたのですか?
「難しい熟語を意識して使っておられるのか、それとも自然に洩れ出てしまうのか、どちらでしょうか。」 というお尋ねです。難しいことをやさしくいいたいといつも思っていたので、ご指摘を受けて顔が赤くなりました。失策ですね。振り返ってみると中学生くらいの時から折に触れて親しんできた作家は、明治期の斎藤茂吉や森鴎外です。彼らが使っていた言葉が頭のどこかにこびりついてつい顔を覗かせてしまうのかも。鴎外森林太郎は特に好きで、津和野のお墓に詣でて「本当にお世話になりました」と頭を下げてきたくらいです。就中、『渋江抽齋』が好きで、何回も何回も読みました。何の変哲もない伝記みたいな本ですが、メッチャクチャに面白いですね。言葉の森を散歩するようにして読みました。一度、お読みになったらいかがでしょう。
文責:清水 佑三
バックナンバー