人事部長からの質問
浅田次郎さんの『蒼穹の昴』に描かれた科挙制度をどう思いますか?
浅田次郎さんの小説はどれをとってもめちゃ面白いですね。それはともかく採用や登用において、いわゆるコネクションの力が働くのは自然であり人情のようなものです。これは中国に限りません。どこの国にもある自然現象です。ただ、コネクションによる登用が行き過ぎると、有能な人はやる気をなくします。これもまた自然な動きです。科挙制度の問題点は、測れるもの(科目別試験)によって、測れないもの(治世の徳)を占う点にあります。国家公務員試験T種でよい点をとった人だけに、行政上の高い位を既得権として与えてしまうような悪習につながります。古代中国は、その反省があって科挙に対して官吏登用に制挙(制科)といわれるシステムを用意しました。コネクションの制度化です。科挙と制挙の振り子をいったりきたりする、が人の世の姿だと思います。
文責:清水 佑三
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