人事部長からの質問
合理性と人情の(篤さ)は両立可能か?
拙著『数字と人情』(PHP新書)でご指摘の問題を扱いました。この二つはまったく違った動きをする別なものであり、矛盾や相克を前提におかなくてもよい、という年来の考えを(本の中で)展開しました。さらに、人を募って結社をつくり、(強い)運動性を、その結社に与えてゆくときに合理性と人情は不可欠のものであり、その両立ができなければ永続的な発展の契機はない、とまで書きました。優れた経営者といわれる人は多少のバランスの違いはあってもその両立を学習によって獲得した人だと思います。近いところでいえば、本田宗一郎さんなどが思い当たります。本田宗一郎さんは、人の個性やなりたちについて鋭敏であった人で、(井深大さんによれば)誰よりもうまく人を使い分けたそうです。合理性と人情の両立の尺度が井深さんのいう「人をうまく使い分ける上手下手」だと私は見ています。
文責:清水 佑三
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