人事部長からの質問

2003/11/06 135

荻生徂徠について教えてください。

江戸中期の荻生徂徠の著作は重要であり、(人事部長の暖簾を張る上で)参考になりえます。熟読をお勧めしたい思想家です。「弁道」「弁名」が主要著作ですが、難しくてさっぱりわかりません。わかりやすい語り口の「南留別志(なるべし)」「政談」がいいですね。前者に「伊勢物語は、うたの心を説きたる物なり。事のあるなしは、論ずべからず」とあり、「紫式部の源語を作るには(略)、数百人、人人態を殊にし、態は情を尽くし、文は変を尽くす。水滸伝より数百年の前に在る也」とあります。ほとんど本居宣長の文章です。うたの心、態、情、変といった隻語に彼の卓越したやわらかい人間観、文芸観が見えます。その聡さが政治に向けられたのが「政談」です。これも全編、卓見の宝庫であり、座右におくべき本です。「政談」は岩波文庫から昭和62年に出ています。

文責:清水 佑三