人事部長からの質問
原辰徳はどうして(監督を)やめたのか?
人の出処進退の理由はわかりません。当人でもわからないものです。みえざる神慮が働いているからです。ただ、原辰徳の辞任を受けて全コーチが彼に殉じたのは近代スポーツの世界では珍しい光景でした。彼が性能によって統治するタイプではなく、徳によって統治する天然記念物のように珍しい存在だったから起こったことです。森鴎外が『興津彌五右衛門の遺書』で描いたおいばら(殉死)は、故人が自分に果たした徳への返礼の意味を含みました。原辰徳が辞任発表の記者会見で「すべての責任は私にある」といいきったこと(認識)が背後にあります。現実問題としてそうではないとコーチたちは痛いほどよく知っているのです。にもかかわらず責任のすべてをひきかぶった行動に「徳」を感じたのだと思います。心の深層に眠る何かが響応したのでしょう。
文責:清水 佑三
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