人事改革、各社の試み

HR領域のプロフェッショナルが独自の視点で新聞記事を読み解いたコラムです。元記事のジャンルにより、各社の改革事例紹介である「人事改革事例」編、改革のキーマンに焦点を当てる「ひと」編があります。2008年更新終了。

ワタミフードサービス
新人育成に知恵絞る、農業やバイト体験、担任がフォロー

2004年5月11日 日経流通新聞 朝刊 7面

記事概要

 ワタミは、この4月、外食産業では最も多い350人の新入社員を採用した。1500人の社員のうち、4分の1が新入社員という状況である。外食産業は一般に離職率が高いといわれており、いかに新人の定着率を高めるかが企業の成長を左右する鍵になる。今年度の新人育成に関するワタミの工夫はいくつかあるが、任意制だった入社前の(1、2ヶ月の)店舗バイトを義務制にしたこと、座学中心の(10日間程度の)入社直後の研修をモデルチェンジし、実践的な体験中心のものに変えたこと、店舗の業務が自分に合わないと感じる人にも、働く場があることを知ってもらう目的で、農業、医療、介護などのワタミの周辺事業を見せるイベントを用意したことなどが特筆できる。ほかに、小学校の担任制のような導入支援係の社員を40人の新人に対して1人おき、一人ひとりの相談に乗る体制をとることで、スムーズにワタミ人になってゆく支援を行う。

文責:清水 佑三

成長率と新人教育熱心度とは比例する

 「居酒屋「和民」を展開するワタミフードサービスが医療・介護事業に参入する。高齢者向け賃貸マンションを開設し、日常の介護から終末医療ケアまでの一貫サービスを提供する。高齢化の進展や規制緩和で、将来性が高いビジネスだと判断した。本業の接客サービスのノウハウも活用する。」(日経企業ニュース)

 「2004年4月、ワタミグループは、念願の農業進出の第一歩としてワタミファームを設立し、千葉県山武町で第1農場を稼動しその規模を随時拡大中です。」(ワタミファームのホームページ)

 なぜ、ワタミは農業・医療・介護事業をてがけようとするのか。記事中にその理由をうかがわせるコメントがある。

  • 食材にこだわる企業姿勢をうちだして、(社員に)仕事への誇りをもってもらう。
  • 将来性と社会的意義のある介護ビジネスで外食業で培ったサービスノウハウを生かす。
  • いろいろなタイプの人を雇用し、多様な仕事を用意してその人たちの持ち味を生かす。

 これらの3つの視点はいずれもユニークだ。企業の目標を外食産業の覇者というふうには見ていない。

  • 何よりもまず「仕事への誇り」を社員にもってもらう。
  • 基幹部分(本業)で培ったノウハウをより社会的意義のある領域で生かす。
  • 多様な人に多様な働く場を提供することで、個人と組織のらせん状の発展をめざす。

 ユニークな考え方は新人教育に生かされている。記者の次のコメントが(他社に例をみない発想を伝えて)象徴的だ。

 入社後の研修ツアーのなかの目玉は、東京都足立区にある「リサイクルセンター」を見学するプログラムである。どうしてこの見学を入れたか。新人社員が店舗を仕事場にしてから、そこで働くパート・アルバイトの人たちに対して、ゴミの分別作業をお願いする。そのときに、なぜそれが必要なのかを、きちんとわかりやすく説明できるようにするためには、リサイクルセンターをじかに見せて、店舗のゴミが目の前で、どんどんリサイクルさせてゆく過程を見せるにしくはないからだ。これが体験学習の本当の意味である。座学とはまったく違った効用をもつ。

 もうひとつあげよう。40人の新人を預かる担任社員は、3ヶ月間、毎日、交換ノートをつけることが義務づけられる。池田高校野球部の伝説の名監督蔦文也がさわやかイレブンを自宅に合宿させて、交換ノートをつけていたのとまったく同じだ。イレブンならまだしも、40人の新人を相手に毎日ノートを交換する負荷は筆舌に尽くしがたい。似たようなことをやってきたのでそれがよくわかる。それを買って出る人をもてることが会社の力なのだ。

 ワタミの知恵は多くの企業にとって参考になる。学ぶべきものがたくさんあると考える。

コメンテータ:清水 佑三