人事改革、各社の試み
HR領域のプロフェッショナルが独自の視点で新聞記事を読み解いたコラムです。元記事のジャンルにより、各社の改革事例紹介である「人事改革事例」編、改革のキーマンに焦点を当てる「ひと」編があります。2008年更新終了。
【働きやすい会社】第5部 意欲高める(4)
社内公募を復活 東京ガス
「自分で選ぶ」 社員刺激
2003年11月12日(水) 日経産業新聞 朝刊 23面
記事概要
東京ガスは、2002年度40人、2003年度48人という社内公募制度による異動者の数をもっと増やしたいと考えている。年間1000人にのぼる異動者全体のなかでごく一部だからである。もともと東京ガスが社内公募制度をスタートさせたのは1990年に遡る。新規事業の担い手を集める目的だった。しかし、その後の本業回帰の流れのなかで社内公募制度は(事実上)廃止されていた。2001年に人材育成上、必要との判断から復活させた。東京ガスでは公募制度の強化で社員が「やりたい仕事を自分から積極的に探し始めた」とみており、会社全体の活性化に貢献できると判断している。
文責:清水 佑三
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社内公募制をもっと活用すべし
コメンテータ:清水 佑三
社内公募制とキャリア採用は、双子の兄弟のようなものである。募集の対象が社外か社内かが違うだけで、志願兵を幅広く募る点で共通する。徴兵で集められる兵士よりも志願兵のほうが戦闘において強いのは当然だ。危険に対する気構えが違う。そのあたりに公募制の本質的な契機が潜む。記事中、東京ガスの公募制度に応募した人たちの次のコメントがある。
私の認識では、公募制にむく仕事とむかない仕事がある。もっと積極的な言い方をすれば、次のような性質をもつ仕事は公募制にしないとダメである。
公募制度がもつ利益を要約しておこう。
記事によれば、東京ガスでは、年間1000人が仕事を変わる。そのなかで、この制度の恩恵を受けて仕事が変わった人はわずか40〜50人である。職務経験(をもった人)を部署の資産として捉え、抱え込んでしまう傾向性は、世界共通だ。そうした抱え込みからは、創造性の爆発は期待しにくい。
自主的な意欲がエネルギーの集中と持続をひきだす。創造性の発露の条件は、自主的な意欲だ。創造性の戦いを強いられている業態、業界、企業は、部署の私物としてそこにいる人を捉えずに、もっと大胆な流動化促進に挑戦したほうがよい。
公募制の活用は、そのための一つの具体的な方策である。