人事改革、各社の試み
HR領域のプロフェッショナルが独自の視点で新聞記事を読み解いたコラムです。元記事のジャンルにより、各社の改革事例紹介である「人事改革事例」編、改革のキーマンに焦点を当てる「ひと」編があります。2008年更新終了。
松下電器 中国で成果主義徹底
来年度から 給与格差 最大3倍
営業や生産部門に
2003年10月27日(月) 日本経済新聞 朝刊 13面
記事概要
松下電器産業は、2004年度から、中国にある53の現地法人、約4万5000人の従業員のうち、主に営業・生産部門を対象に、営業成績や生産能力を給与に大きく反映させる賃金制度を導入する。具体的には営業成績でノルマ達成率が9割に満たない場合は、給与の5割を占める歩合給部分がゼロとなる。さらに将来、歩合給部分の比率を7割に高める考えで、その場合、営業成績に応じて給与格差は3倍になる。成績下位5%の社員には退職を促す「5%ルール」も導入する。中国に進出している日本企業での導入は珍しいといえる。
文責:清水 佑三
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退職を促すルールは下位5%に入ること
コメンテータ:清水 佑三
成果主義人事制度の究極の目的は、良貨をもって悪貨を駆逐する、である。「黒い猫でも白い猫でもねずみをとる猫はいい猫だ」というケ小平の実利思想が背後にある。良貨とは、会社にとってプラスになる人材であり、悪貨とは、その反対の人材を意味する。その定義が明確であれば、悪貨を駆逐する新陳代謝ルールを設定できる。
異文化のもとであるが、松下電器産業(中国)の販売及び生産部門ではこうしたルールを設定して実践している。以下の内容である。
(販売部門)
(生産部門)
(勧奨退職ルール)
成績下位5%ルールが重要である。この水準をもって社員失格とする判断が社会の公序良俗、安寧と矛盾しない保障があればよい。
中国においてこの制度を実施する目的は、「優秀な人材の確保」である。「優秀な人材」がこうした弾力的な報酬制度によって(従来よりも)獲得できるとしよう。同じ考え方の導入が松下電器の日本法人においても視野に入らないわけがない。松下電器の今後の人事制度改革に注目したい。