人事改革、各社の試み
HR領域のプロフェッショナルが独自の視点で新聞記事を読み解いたコラムです。元記事のジャンルにより、各社の改革事例紹介である「人事改革事例」編、改革のキーマンに焦点を当てる「ひと」編があります。2008年更新終了。
住友信託銀
能力次第で誰でも幹部に
一般、総合職の区別を撤廃
2003年9月28日(日) 産経新聞 朝刊 2面
記事概要
住友信託銀行は、2003年10月1日から全職員に経営幹部への昇進の道を開く新しい人事制度をスタートさせる。年齢、性別に関係なく優秀な人材を登用しようという狙いがある。一般職、総合職という区別もなくし意欲と能力に応じた給与体系にあらためる。一般職、総合職の区分にかわり、専門性の高い仕事を続ける「ディビジョン」、全業務をこなす「プロフェッショナル」、転勤を伴わない「エキスパート」の三つのキャリアコースが設置される。同時に資格給を廃止し、4ランクの職群給に切り替える。
文責:清水 佑三
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総合(一般)職制度、終焉のはじまり
コメンテータ:清水 佑三
住友信託銀行が総合(一般)職制度の廃止という「銀行業界ではめずらしい抜本的な人事制度改革」に踏み切った理由は記事の最後にある。
新人事制度のイメージは次のようなものである。
a. 転勤を伴う…プロフェッショナル・キャリア
b. 転勤を伴わない…エキスパート・キャリア
「能力次第で誰でも幹部に」という見出しの意味は、不動産、年金、投資運用、個人顧客顧問といった専門性の高い仕事をする人たちにも4つのランクが充当され、最高ランクの人については会社幹部として扱う、という考え方である。いいかえればコースとランクによって作られるマトリックスの全項目に可能性を用意するという意味だ。
また、コース変更についても本人希望等によって柔軟に対応することが謳われている。あるコースで獲得したランクを他のコースに持ち運べるという考え方だ。家族や地域社会との関係で、ある時期から転勤ができない事情におかれたとしても、有能、有用な人が意欲を失わないで仕事に打ち込める環境を用意したともいえる。
採用段階からこの考え方を用いる、が重要である。かりに、こうした人事制度改革によって人心が高揚し、勢いが生まれたとする。他の信託銀行は右へ倣えをするだろう。他の銀行にも波及するだろう。そこから大きなうねりが誕生する。