人事改革、各社の試み

HR領域のプロフェッショナルが独自の視点で新聞記事を読み解いたコラムです。元記事のジャンルにより、各社の改革事例紹介である「人事改革事例」編、改革のキーマンに焦点を当てる「ひと」編があります。2008年更新終了。

私の主張 日野自動車会長 大木島巖氏(下)
柔軟な労働市場を 企業に問われる「人事力」

2004年1月12日(月) 日刊工業新聞 朝刊 3面

記事概要

 今の日本は渡来人を受け入れたことによってできている。もっともっと外国人が働けるようにしないとダメだ。単純労働者の受入れについて慎重論が強い。垣根を高くして非合法入国者を増やすよりも、垣根を低くして合法的な受入れを促進したほうがよい。

文責:清水 佑三

問題は実行力だ…至言なり

 卓見満載の(取材)記事である。贅肉を殺ぎ落としたエッセンスだけが詰まっている。全体の文字数は少ないが、指摘の量、質ともに優れている。次のような文章に驚く。

  • 単純労働に従事する外国人雇用を(法を整備して)積極的に進めよ。
  • 就労人口の確保には意欲と能力のある高齢者を(選別して)活用すべきだ。
  • 企業が勝ち残るためには技術力、財務力以上に「人事力」が問われる。
  • 「人事力」は多様な働き方の提案と多彩な人材を獲得する力をいう。
  • 労働力に関するよい提言はたくさん出ているが実行されない。
  • その原因に「満点がとれない政策は実行すべきではない」という悪しき風土がある。
  • 企業、公共とも100点満点の政策はない。踏み出そうとしない限りどんどん時間をロスする。
  • 今すぐできることを今すぐやるべきだ。

 「人事力」の定義の明快さに驚く。100%賛同する。以下、大木島さんのいう「人事力」を企業がつけてゆくための具体的な方法について付言する。

  • 多様な働き方の提案=多様な価値観、知能タイプ、行動傾向をもつ外国人を雇用して「透明性の高い成果主義」を実践する。結果として多様な働き方図鑑がつくれる。
  • 多彩な人材の獲得力=今の働き方での高業績者をもとに作られた「旧採用基準と旧選考法」を全廃し、多様な働き方図鑑をもとに「新採用基準と新選考法」を用意する。

 こうした提言は、強いリーダーシップがないと実行できない。(新しいアイデアに)少しでも論理矛盾があると、既得権勢力とコジウト、牢名主の総攻撃にあってあえなく沈没してしまうのは大木島さんの指摘のとおりだ。

 かくて強いリーダーシップをもつ企業はますます強くなり、その反対の企業はますます弱くなる。強いリーダーシップをもつことを自ら禁じている官界は、時代のバスにいよいよ乗り遅れる。

 トップインタビューは大体がおもしろいが、日刊工業新聞のこの記事もおもしろい。「人事力」の時代とは言いえて妙である。

コメンテータ:清水 佑三