人事改革、各社の試み

HR領域のプロフェッショナルが独自の視点で新聞記事を読み解いたコラムです。元記事のジャンルにより、各社の改革事例紹介である「人事改革事例」編、改革のキーマンに焦点を当てる「ひと」編があります。2008年更新終了。

変わる日産 
第2部 経営力を磨く(8)
企業文化を大変革

2004年2月26日(木) 日本工業新聞 朝刊 7面

記事概要

 2004年、日産は新人事制度の導入により、企業文化の大変革に取り組む。変革の柱は(1)社員の評価価値の変革、(2)実力主義の徹底、の二つである。(1)社員の評価価値の変革では、業績を賞与に反映する評価軸とする一方、月例賃金には「コンピテンシー」という個々の仕事に求められる基礎能力の絶対評価を反映させる。「コンピテンシー」にはチームワークや部下育成などゴーン流の行動規範が盛り込まれる。(2)実力主義の徹底では、ホワイトカラーと技能職の垣根を取り払い、人材の流動化を促すとともに、飛び級などの人事登用制度を導入する。

文責:劔持 聡恵

日産はどう変わるのか

 記事中、こんな記述がある。

  • トヨタやホンダが創業者精神に基づく企業文化の「トヨタウェイ」「ホンダイズム」の継承を国際競争力として誇る改善や独創技術の源泉とするのに対し
  • (企業文化は)これまでの日産には明確でなかった
  • コンピテンシーはいわば、トヨタのトヨタウェイ、ホンダのホンダイズムに相当する日産の新たな背骨として企業文化を形づくる指針となる
  • 二つの大変革を内在する新人事制度の定着には困難も予想されるが、この制度が確かな企業文化として一般社員に定着した時、日産の経営力はトヨタやホンダに着実に近づくことになる

 企業文化とは何であろうか。いろいろな議論があるが、私は次のように定義したい。

 「企業文化とは、その会社を特徴づけている=らしさ=をいう」

 ヴァリュー、ウエイという言葉は目標概念の響きをもつ。企業文化が醸成される「媒介」となるひとつだろう。

 コンピテンシーという言葉は、職能という概念をより明確化したものだ。競争の帰趨や成果創出に直接的な関与が認められる職能といってよい。

 上に述べたヴァリューやコンピテンシーという目的的な言葉と比べると企業文化という言葉は、日本語の「らしさ」に一番ちかい。やっぱり、トヨタ、日産、ホンダはそれぞれがそれぞれの「らしさ」をもっている。

 企業文化はそういう意味でいえば、個人がもつ「人柄」に近い響きをもっている。日産がある意味で都会的、スマートな「らしさ」をはぐくんできたとすれば、カルロス・ゴーン氏はそこに「強さ」を付与してほしい、と考えたとみる。

 ヴァリューやコンピテンシーが無意識化され、行動習慣となれば「企業文化」に転じる。よき日産マンがもっていたスマートさを残して、標榜された「強さ」をもったら世界的により強い会社になるだろう。

 期待して見守りたい。

コメンテータ:劔持 聡恵