人事改革、各社の試み
HR領域のプロフェッショナルが独自の視点で新聞記事を読み解いたコラムです。元記事のジャンルにより、各社の改革事例紹介である「人事改革事例」編、改革のキーマンに焦点を当てる「ひと」編があります。2008年更新終了。
【賃金】
成果主義手探り(上)
「自分の対価」迷う社員
2004年2月24日(火) 日本経済新聞 朝刊 1面
記事概要
成果主義賃金への傾斜は初任給にまで及ぼうとしている。三洋電機は初任給に格差をつける新人事制度の検討に入った。それを進めようとしている人事担当者は「能力ある人には見合った処遇が必要だ。優秀な人材を集めるためには絶対条件だ」とコメントしている。
文責:清水 佑三
HRプロならこう読む!
初任給に格差をつけたい三洋電機
コメンテータ:清水 佑三
日経一面の「日経スペシャル」ともいうべき囲みは、同社の問題意識、取材力、表現力の高さを示し、つねにおもしろくまたタメになる。今回の「賃金、成果主義手探り(上)」も、具体的な事例をあげて、今、我々は賃金問題においてどういう場所に立っているかをわかりやすく教えてくれる。
記事中、初任給に格差をつけたいとする三洋電機の事例が筆者をひきつける。記者は三洋電機の人事担当者のコメントを次のように要約する。
以前から、大学院修士課程修了者と学部卒業者との間で初任給に差をつけることはあった。しかし、同一初任給制度をやめて、個人別に能力を評価し、社会に出た段階から差をつけるという話しはあまりきかない。
司法試験や会計士試験をパスした学生を法務部や財務部が市場賃金を用意して採る、が具体的なイメージだ。確かにサークルやバイトだけの生活をしてきた学生と(苦労して勉強した彼らが)同じ初任給では納得しまい。
経済社会生産性本部の東瓜主任研究員が(記事中で)いっているように、職種別賃金制度があれば、職種別採用によってそれができる。日本には欧米のような形での職種別賃金体系は整備されていない。
三洋電機の問題意識と方向は間違っていない。具体的な方策として以下のようなステップが用意できれば実施は可能であると考える。
ジョン・グリシャムの『ザ・ファーム』を読むとアメリカのロースクールを出た人たちの初任給はばらばらだ。市場原理が働いて個別な条件提示がなされる。優秀な学生にはよい事務所から高い初任給が提示される。
この記事はそういう社会が日本においてもすぐそこまで来ていることを示唆している。