人事改革、各社の試み

HR領域のプロフェッショナルが独自の視点で新聞記事を読み解いたコラムです。元記事のジャンルにより、各社の改革事例紹介である「人事改革事例」編、改革のキーマンに焦点を当てる「ひと」編があります。2008年更新終了。

定年退職の技術者活用
NTTデータ
開発管理で新会社

2004年2月2日(月) 日経産業新聞 朝刊 5面

記事概要

 NTTデータは2004年1月30日、プロジェクトマネジメントの経験豊富な定年退職技術者からなる工程管理請負事業を営む子会社を設立した。当面は、NTTデータの定年退職者を継続的に(元の職場で)活用してゆくための「仕組み」であるが、順次、NTTデータだけでなく、グループ会社にも対象を広げてゆく。情報システムが大規模・複雑化するなかで、定年退職によって市場に放出されるベテラン技術者をプールし、工程管理を請負うという新しいビジネスモデルの構築として注目される。

文責:清水 佑三

定年退職者群は宝の山

 有用な技術をもっていながら、その技術を発揮する場に恵まれない人はたくさんいる。そういう人たちに場を提供するビジネスをはじめたら産業社会の支持を得るだろう。NTTデータの今回の子会社設立の動機は単純でわかりやすい。

この記事中で大切なのは次のポイントである。

  • 60歳を超えた定年退職者群の中から、
  • プロジェクトマネジメント(工程管理)の経験が豊かな人を、
  • 勝手がわかっている今までの職場で継続して働いてもらう。

それなら、今までの定年退職者の再雇用とどこが違うか。

  • 正社員の身分で働ける。
  • (新会社の)利益創出に直接かかわれる。
  • 戦力性が担保されればいつまででも働ける。

年齢に関係なく仕事を続けてゆきたい、と思う人はたくさんいる。問題はその人の有用性と受け皿だけである。NTTデータの今回の新会社が本体だけを意識したサービスでなくなったとき大きな社会運動の色彩を帯び始めるだろう。

そのとき関係するたくさんの人から感謝されるにちがいない。「利益」はそうしたかかわる人たちの感謝の気持ちの総量と同じものだ。

この新会社の成功と発展を願ってやまない。

コメンテータ:清水 佑三