人事改革、各社の試み

HR領域のプロフェッショナルが独自の視点で新聞記事を読み解いたコラムです。元記事のジャンルにより、各社の改革事例紹介である「人事改革事例」編、改革のキーマンに焦点を当てる「ひと」編があります。2008年更新終了。

社員が選択する報酬体系
三菱商事人事部長 上田敏氏
インセンティブは部署ごとに

2000年10月20日(金) 日経産業新聞

記事概要

 三菱商事人事部長上田敏氏は、「若手社員は会社の枠にとどまらず、社外でも通用する市場価値をもちたいと考えている。そのための努力を正当に評価する会社にしてゆきたい」と語った。手をあげて他の部署に移る社員がかつてないほど増えている。佐々木幹夫社長も「忠誠心だけの社員はいらない」と話す。

文責:清水 佑三

 

 給与制度の設計の任になる人は、この記事を熟読すべきだ。ポイントは以下のとおりである。

  1. 全社一律という制度の前提をとっぱらった
  2. 事業部の提案した報酬制度を人事部が承認
  3. 入社年次や年齢に関係ない契約型の報酬制
  4. 複数案の選択制をとり個人の自由に任せる
  5. 成功したら情報開示し他部署は参考にする

時代は明らかにこの方向に向かっている。国における税制がそうであるように、報酬制度も会社全体を通して整合性を求めても得られるものはない。それぞれの部署ごとに市場価値が違うからだ。それぞれの部署を自由競争下において適者生存の法則で動かすことしか生き残り策はない。分社化の本質はそのあたりにある。合併、統合で規模の利益を確保し、分社化によってコストの市場弾力性を確保する。このノウハウを持てばいくらでもM&Aをかけることができる。定年を65歳まで延長しても十分対応できる。

コメンテータ:清水 佑三