人事改革、各社の試み
HR領域のプロフェッショナルが独自の視点で新聞記事を読み解いたコラムです。元記事のジャンルにより、各社の改革事例紹介である「人事改革事例」編、改革のキーマンに焦点を当てる「ひと」編があります。2008年更新終了。
ソニー
諸手当を全廃
来年4月から 成果主義に全面移行
2003年11月29日(土) 東京新聞 夕刊 2面
記事概要
ソニーは2003年11月29日、国内の一般社員約1万2000人を対象に2004年4月から住宅手当や家族手当を廃止する成果主義賃金に移行することを明らかにした。現行の給与体系は年功要素を反映させて本給部分と、「扶養家族」「住宅補助」などの諸手当部分からなり、後者は給与全体の5%を占めていた。新しい賃金制度のもとでは、従来の制度では入社10年かかっていた最高資格「1」への最短の到達が数年にまで短縮される。
文責:清水 佑三
HRプロならこう読む!
年功型賃金を廃止しただけではないか?
コメンテータ:清水 佑三
「ソニー、諸手当を全廃」という見出しは間違っていない。ただ、「成果主義に全面移行」という見出しについてはやや疑問がある。記事のどこを探しても、成果主義への全面移行を裏付ける「具体的な記述」はない。
この記事の内容を要約すれば、次のとおりだ。
ソニーは来年4月から、
「基本給」制度の概要は記事中では明らかにされていない。散発的に次のような記述があるだけだ。
以上の記述から想像するに、ソニーの一般職の報酬システムは、次のようなものだ。
以上は、記事の文章からの筆者の想像である。
成果主義はプロ野球の年俸制度のようなものをさす。成果があれば、いきなり3倍になってもよい。号俸等級表なるものは原理的にまったく存在しない。個人別成果別である。
ソニーの新給与制度は、基本的に号俸等級の思想を温存させている。簡素化させただけだ。過去の職能等級制度もアップダウンの思想はあった。ソニーだけでなくどこもそれを大相撲の給金なおしのように(厳密に)運用しなかっただけである。年功給をやめて(本来の)職能給を実行する、程度の改変である。
ソニー、成果主義に全面移行という表現はよって過剰表現である。新聞は社会の木鐸をもって任じている。新聞は、日本企業の報酬制度を何が何でも成果主義にもってゆきたいのであろうか。