人事改革、各社の試み
HR領域のプロフェッショナルが独自の視点で新聞記事を読み解いたコラムです。元記事のジャンルにより、各社の改革事例紹介である「人事改革事例」編、改革のキーマンに焦点を当てる「ひと」編があります。2008年更新終了。
ファンケル中央研究所長執行役員 辻智子さん
好きなことを肩ひじ張らず
2005年5月16日 毎日新聞 朝刊 9面
記事概要
ファンケル執行役員(中央研究所所長)という要職にある辻智子さんは、京都大学農学部を卒業後、味の素に入社、微生物の培養液からがんや感染症を抑制する医薬品のもとになる物質を探す仕事に、9年間携わった。ライバル会社との厳しい競争のかたわら、博士論文を執筆、農学博士号をとる。同僚研究者であった夫が会社から米国留学を命じられると、あっさりと味の素をやめて、夫とともに米国に渡り、米国の研究機関に身をおいた。ファンケル入社は今から6年前「大きな組織にはない発展途上の過程に何ともいえぬ魅力を感じた」から。ファンケルの主力部門である健康食品部門のグループリーダーを経て、昨年、中央研究所所長に就任した。48歳の今、研究所という組織のトップに立つが「知ったかぶりをしない」信条で自然体で働く。「専門知識がないのに指示を出しても現場が反発するだけ。現場のいいアイデアを認め、その実現を支援するのが自分の仕事」と楽しそうに語った。(熊谷泰記者)
文責:清水 佑三
HRプロならこう読む!
信念をもち楽しく働く女性執行役員、「この人を見よ」
コメンテータ:清水 佑三
辻智子さんの言葉は正直だ。味の素時代を振り返っての二つの発言にそれが出ている。長嶋茂雄流にいえば、ひとつのいわゆる男性文明批判である。
「(味の素の女性管理職の多くは)優秀で非のうちどころのない方ばかりだったが、若かったわたしは、決して、そういう人たちのようになりたいとは思わなかった」
「男性(管理職)に負けまいと肩ひじを張っている印象が強く、楽しそうに働いているようには見えなかった」
ダイバーシティを無視した男女機会均等(呪縛)社会がうみだす醜悪なイメージを、身近に感じ取ったのだ。
それではどう(仕事場で)生きるか。彼女の片言隻句から探ってみる。
***
ところでファンケルくらい個人的にお世話になっている会社は少ない。発芽玄米にはじまり、デオ・クリスタルなど、じつにたくさんの商品を身近において使っている。
銀座にある「泥武士」も知らないでよく利用していたが、ファンケル経営ときく。
どうしてこうまでファンケルにどっぷりとつかってしまうのか。答えは単純だ。満足しているからである。
辻智子さんがいう「本当のよさをつくれば多くの人に知ってもらいたいと自然に思う」もの。
発芽玄米にしてもデオ・クリスタルにしても、いずれも周囲の人の薦めがあって使いはじめた。そういうものだろう。
記事にある写真はとてもきれいに撮れている。
耳の形がよく、仏教でいう「衆生救済の相」をしている。
こういう人が、こういうふうに働き、発言できる社会っていいよなあ、が今回のコメントです。