人事改革、各社の試み
HR領域のプロフェッショナルが独自の視点で新聞記事を読み解いたコラムです。元記事のジャンルにより、各社の改革事例紹介である「人事改革事例」編、改革のキーマンに焦点を当てる「ひと」編があります。2008年更新終了。
日本道路公団
談合防止策を公表 管理職以上天下り禁止 指名競争入札を全廃
2005年8月10日 読売新聞 朝刊 2面
記事概要
橋梁談合事件で、現職副総裁ら最高幹部2人の逮捕者を出した日本道路公団は8月9日、外部有識者らも加わった公団の「談合等不正行為防止策検討委員会」がまとめた提言にそって(1)理事ら役員についてすべての受注企業への天下りを無期限禁止する、(2)公団本社の課長代理、出先事務所の副所長級以上の管理職については5年間禁止とする、(3)一般職員が、(受注企業に入って)営業活動と関係ない業務に就く場合は、本人から「営業にかかわらない」とする誓約書の提出を求め、審査機関で個別に再就職の可否を審査する、(4)公団の就業規則に「受注企業への天下り自粛」を明記し、企業側にも、天下りを受け入れた企業名の公表を入札参加資格登録時に協定書をかわす等の天下り禁止策を公表した。さらに入札改革として、発注者の裁量で入札参加者を限定していた指名競争入札を全面廃止することも明らかにした。
文責:清水 佑三
HRプロならこう読む!
人を腐敗させてゆくパッションは「私物化」
コメンテータ:清水 佑三
道路公団民営化と郵政民営化は、同じ文脈のもとで主張されることが多い。主張者の暗黙の仮定には次のようなものがある。
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こうした「官の腐敗」によって、納税者の納税意欲が急速に失われ「よき納税者」は、いつのまにか姿を消してゆく。節税=脱税を支援する専門家の集団が跋扈する。
道路公団の橋梁談合事件で明らかになった「有料・高速道路にかかわる官業の腐敗構造」には次のような特徴がある。
組織ぐるみの談合体質が表面化した日本道路公団(以下、公団)であるが、8月4日の読売新聞ネット配信によれば、天下り先に闇の勢力も含まれる。
(読売新聞によれば)公団は指定暴力団松葉会の元最高顧問が60%以上の株をもつ土木工事会社に3人のOBを天下りさせる一方、昨年までの7年間に(判明分だけで)総額30億円以上の高速道路工事などを発注していたという。
その土木工事会社の業務の大半は公団に関連するもので、公団も同社を(全売上の半分以上を公団との取引がしめる)緊密企業と位置づけていたとされる。
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闇は闇を好む。筆者のいう「ロシア化」は、よき納税者を輩出する健全な国家の終焉を意味する。税金を払うことを忌み嫌う国民を大量造成してしまったのがロシアだ。
その反対が国民負担率が世界一といわれるスエーデンである。働いて得たお金の半分以上を、税として国家に収める。しかし、この国に生まれてよかったと思う国民の比率は高い。税の徴収と費消の二つにおいて、国民が政府を信頼しているのだ。よき納税者を国が作っている。
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道路公団民営化と郵政民営化とは相似形の課題である。郵政民営化について竹中平蔵は次のように説明する。
これだけ簡明な利益がありながら郵政民営化に反対するのは、反対している人が現に手にしている既得権を失う恐怖からではないか。その証拠が民主党の郵政民営化反対の主張だとつづく。
これが彼の郵政民営化トークの「骨太の概略」だ。同じことが道路公団民営化についてもいえるだろう。
世界を旅して思うのは、こんなに有料道路の料金が高い国はない。何かがおかしい。諸悪の根源は「私物化」という現象だろう。人を腐敗させる最大のパッションは公なるものの私物化である。官に限ったことではない。
「コンプライアンス」問題を読み解くひとつの鍵である。