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成長のシナリオ(Afterコロナ、Postコロナに向けて)

2022年9月期は、コロナ禍での東京五輪、パラ五輪開催後落ち着きをみせていた新型コロナウイルスの感染者数が年末の変異株の出現により再拡大し始め、第6波が広がる中での事業展開となりました。
11月には、上場企業で2022年3月期の純利益見通しで最終増益を見込む企業は約7割と8年ぶりの高水準との記事もでていました。しかし米中の対立からくる経済摩擦などの不安要因が改善されない中、2月のロシアのウクライナ侵攻によりエネルギー資源高騰、食料危機などが引き起こされ、世界的に景気が落ち込む状況となってきました。

新卒採用では、政府主導の「3月広報開始、6月選考開始」という日程は継続されましたが、企業側、学生側がともにこれまでのコロナ禍の経験を活かしオンライン対応にも慣れ大きな混乱はみられませんでした。企業の堅調な採用意欲を背景にインターンシップ前提の採用、就活がさらに進み、学生側も3年生のオンライン実施のサマーインターンシップからスタートし、インターンシップイベントに参加する傾向は強く、民間企業(マイナビ社)の調査でも2月時点でのインターンシップ参加比率は91.3%と前年(84.5%)より増加しています。こうした中で、コロナ禍の採用選考は会社説明会や面接はオンライン実施が基本となり、6月には大手企業の選考の山場を迎えました。会社説明会や選考序盤の面接まではオンラインで実施、最終面接はできるだけリアルで実施というハイブリッド型が定着してきました。
民間企業(就職みらい研究所)調査では2022年10月1日時点での内定状況が93.8%と前年比では1.4p増という結果になり、前年に続きコロナ禍以前の水準で推移しています。大手企業、中堅中小企業の堅調な採用意欲を背景に内定率は高い水準であり、それが内定率の進捗にも出ているものです。

当社業績は2021年10月以降2022年3月までの上期累計では、企業の採用選考の前倒しもあり売上が順調に前年から伸びたものの、4月〜6月の第3四半期(中盤)では企業の面接選考が本格化し受検者数が減少傾向となりいったんペースが落ち、2024年卒者向けのサマーインターンシップ選考での当社テストの導入、高校生の9月の採用試験、インターナル案件の成約などもあり7月〜9月の第4四半期(終盤)で盛り返すことができました。
最終的には、2022年9月期決算は、ご報告のように売上、営業利益、経常利益とも伸び増収増益となりました。
現状では、ウクライナ紛争が解決せず、世界的なインフレ不安もあり、コロナも新たな変異株の発生が見られ収束までが不透明な状況と経済が安定する期待が見通せません。半導体不足、エネルギー資源高、サプライチェーンの崩壊など景気腰折れ要因となりそうな課題も山積です。
国内でもコロナ禍により経済が低迷する中で、エネルギー高騰、円安が進行し景気回復への確かな足取りが感じられません。消費低迷から脱するためにも、出入国での制限が緩和され海外観光客が増加することを旅行業、ホテル業などのサービス業界や飲食業界は期待していますが、この冬にはインフルエンザとコロナのダブル流行も予想されるなど先行きはっきりしません。製造業はゼロコロナ政策が続く中国経済の立ち直り次第という側面が強く、自動車産業も半導体不足の影響から減産が続いています。IT業界を中心にDXをキーワードに新たな事業創造を期待し企業全体としては新卒採用意欲は依然として堅調なレベルですが、今後の世界的な経済の落ち込みがあればそれもわかりません。
長期的にみれば、今後も少子高齢化社会が進み構造的に人材不足感がますます強くなっていきます。「メンバーシップ型採用」から「ジョブ型採用」へのシフト、テレワーク、ワーケーションなど新しい働き方の広がりとともに、DX改革を促進させるための人材を、有効かつ効率的に活用していくこと、人材のリスキリング投資が各企業の共通の課題となっています。
2024年卒の新卒採用でもこれまでと同様の政府要請の日程ですが、2025年卒からインターンシップでの学生情報を採用でも活用できるようになり、2024年卒ではその方向に向けての準備の動きが活発化しそうです。2022年10月時点での調査(マイナビ社)では、2024年卒学生の87.6%がインターンシップ(ワンデー仕事体験含む)に参加経験ありと回答しています。これは前年から4.0p増しています。インターンシップに始まり本番の選考まで、フローのオンライン対応はますます促進されるようになります。学生側もスケジュール調整などの面で負担が少ないという点からオンライン化を受け入れています。コロナが落ち着いてきたとしてもこの状況は変わらないでしょう。
現段階では、Afterコロナ対策として何ができるか、Postコロナに向けて何をすべきかを考えていくことが求められています。当社も今後の新卒採用のあり方や企業側のニーズの変化を見据えながら対処していく所存です。企業側、学生側の動きに先んじてコンサルティング、代理店への営業支援ができるように引き続き行動してまいります。

今回の「成長のシナリオ」では、2022年9月期のコロナ禍での結果を踏まえ、Afterコロナ、Postコロナに向けて、どのように対応していくかについてまとめました。
当社の方向性としては大きな変更はありません。採用日程ルールの廃止等があっても、企業側の新卒採用ニーズは「優秀なコア人材」「グローバル人材」への対応です。当社からの職務要件の設定、採用基準作りのコンサルティングを核に、これらのニーズを正確に把握、分析し、その企業に最適な商品・サービスをスピーディに提案してまいります。
なお「グローバル人材のSHL」というグローバルブランドが当社の強みです。2013年9月に当社のライセンス供与先であったSHL Group Limitedを人事関連の会員制アドバイザリー会社である米国の上場会社Corporate Executive Board Company(以下、CEB社)が買収、そのCEB社は2017年4月にITリサーチ&アドバイザリー会社のGartner社に買収されました。そして、2018年2月にGartner社が英国の未公開株式投資会社であるExponent PE社にCEBタレントアセスメント事業の売却を決定、旧CEBアセスメント事業部門は同年4月からSHL Global Management  Limited(以下SHL社)としてSHLアセスメント事業を展開しております。当社とのライセンス契約はCEB社そしてGartner社、さらにSHL社に引き継がれております。なお、当社とSHL社との間の2023年3月31日を期限とするライセンス契約は、現時点において契約更新は未了です。

これまで以上に一層の経営体質強化を図り、役員・社員が一丸となって業務にあたり、今後とも業績拡大へとまい進していく所存です。 より一層のご理解とご支援を賜りますようお願い申し上げます。
この「成長のシナリオ」は、コロナ禍の中での中期的な経営指針であります。

2022年11月8日
文責 代表取締役 奈良 学

コア事業の新卒テスト市場に戦力集中、中途、転職市場での補完も確実に進展

当社は、これまで、新規学卒者の採用選考における適性テストを主とした人材アセスメント(エクスターナル)サービスを中心に提供し、このマーケットにおいて高い評価をいただいております。企業側は厳しい経営環境下では採用数を絞り込む傾向にありますが、業績好調の中でも、むやみに採用数を増やすのではなく、学生への質重視の「適切な人材」「優秀な人材」に対する企業の要求は年々高いものになっております。新卒採用日程等の変更があっても「入社後にきちんと成果の出せる人材、配属予定の業務に適性のある人材」を求めるニーズはより強くなっていき、そのための適切な選考ツールが求められております。

コロナ禍にあってもこのように新卒採用に対するニーズは底堅く、当面はこのコア事業である市場としても伸びている新卒市場での戦力集中を引き続き展開する方針です。そのためには「商品力のさらなるアップと営業組織の強化、営業効率の改善」が必要です。商品力については既存商品の改善スピードをアップし、営業体制では、東京、名古屋、大阪の三拠点を軸に各業界の主要企業とのさらなる取引拡大を目指します。2020年7月に2,222人の参加予約数、1,516人の視聴者数の規模で開始した大型オンラインイベント「採用シンポジウム」は、2022年7月開催でも1,504人の視聴者数となっており、それまでのリアルイベントとは比較にならない集客力があることから、今後もオンラインイベントを核に大手、中堅企業を中心とした情報収集ニーズに応える試みを実施していきます。こうした各種のイベント・セミナーから見込み客を獲得し受注・成約に結び付ける営業手法により、効率化を促進させていきます。効率的な営業活動の促進としてコンサルタントの営業活動との相乗効果を今後も強化してまいります。また引き続き定期採用で新卒を採用し今後の当社を担う人材として育成指導してまいります。

新卒市場以上に現在活発化している経験者採用市場に対しても代理店のネットワークからの取り込みにより成果が上がってまいりました。全国に展開した代理店チャネルを通じてそうしたニーズに細かく対応してまいります。有力な販売代理店チャネルを通じた顧客の拡大により当社の顧客数は毎年増加しておりますが、2007年の(株)毎日コミュニケーションズ(現(株)マイナビ)の資本参加により、この拡大に一層勢いが加速していると確信しております。

現状は、コロナ禍環境にも慣れ対応力がつき、徐々には人の流れも回復してくるはずです。国内企業でも「グローバル人材」の採用と育成の必要性は変わりません。世界150ヶ国にわたるグローバルネットワークを持つSHL社は40以上の言語に対応した測定ツール(以下、多言語ツールという)を通じて主要国の先進的企業をはじめ1万社以上のクライアントに対し年間3,000万件のアセスメントを実施しております。国内市場では当社が引き続きグローバル人材採用を支援する体制を維持するとともに、新商品の開発等につきましても両社のもつ研究・開発力を連携してまいる考えです。

以下の4つの基本戦略を当面のコロナ禍後の成長シナリオとして継続し、今後とも売上、営業利益を伸ばし、さらには大幅に増加させるステップに載せることを当面の目標とします。

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成長シナリオ1 取引社数8,591社達成、今後も拡大、シェア50%獲得を目指す

当社の取引社数は8,591社となりました。これまでも社数を順調に伸ばしておりましたが、2022年9月期もコロナ禍の中で764社増(9.8%増)となりました。企業の新卒採用ニーズは堅調であり、引き続き新卒市場をコアに、毎年5%程度の拡大を目指します。当社の(株)マイナビ、(株)キャリタスといった販売代理店(販売委託先を含む)23社は、各社の取引社数を合わせ約2万5千社の納入先を有しております。採用適性テスト市場において当社の「玉手箱」「GAB」等のブランドイメージはトップ商品として強固なものになってきております。引き続き当社販売チャネルを通じこの2万5千社の納入先に当社プロダクトを拡販することで新規顧客をさらに拡大していくことは可能だとみております。

景気変動を受けやすい採用市場の中でも新卒採用市場は経験者採用市場、派遣・パートといった臨時雇用市場に比し底堅く推移しております。競合他社との兼ね合いもありますが、新卒採用市場での当社商品の強みを生かしさらなる取引社数の増加で現状3割程度と推計される当社の適性テストのシェアを5割まで上げていきたいと考えております。

また当社の競合他社の有力取引先である大手企業についても、その一部が当社の販売代理店経由で当社の販売見込み客となってきております。従来は当社の人員体制面からフォローしきれない点もありましたが、現在では販売代理店による営業体制ネットワークの充実により、当社コンサルタントの人的資源をこうした有力な販売見込み客に優先して投下できる環境になりつつあり、当社として積極的にアプローチしてまいる方針です。当社の新卒採用人員を今年4月入社も9名規模とし数年後の戦力人員として育てております。

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成長シナリオ2 対面サービスの厳しい中、Web化の推進による利益率のさらなる向上を

当期は、コロナ禍の中で、Webテストの優位性がクローズアップされることになりました。

当社は、創業以来今日まで質問紙法とよばれる心理テストを媒介にした情報処理型サービスを主体に事業展開してまいりました。被検者に対して長い時間の拘束ができない新規学卒者の採用選考においてこの手法は極めて有効であり、結果として当社の売上の大部分は新規学卒者の採用市場に集中してまいりました。また顧客ニーズを先取りする形で他社に先駆け、ブランド力のある適性テストである「玉手箱」「GAB」等のテストの主力商品をはじめ、各種のアセスメントツールのWeb化を進め、顧客企業から高い支持をいただいており、Webアセスメントツール売上は2022年9月期も売上高比率で87.1%に達し当社利益増の推進力となっております。(株)マイナビ等の代理店経由で販売する適性テストは、中小企業向けは紙ベースが主力ですが、コロナ禍の中では三密回避が求められ大手企業だけではなく、中堅以上の企業でもインターネット上のWebテストに切り替えが進むはずです。Webならば仕様変更が容易にでき、当社も在庫を持たずにすみ、物流費やデータ入力の手間が削減でき、利益率の向上につながります。すでに8年前に当面の目標だった Webアセスメントツールの売上高比率65%を達成し、さらに2019年9月期で75.3%、2020年9月期で83.8%、2021年9月期で86.6%と伸びております。今後、この比率目標を90%に近づけるまでに高め、さらなる利益率の向上に努力してまいります。

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成長シナリオ3 現有社員向けサービスの機会拡大、顧客を絞り込み、効率営業を

採用選考場面のような社外の人に対するエクスターナルサービスに対し、配属・登用等の人事施策の適正化に関する現有社員に対するインターナルサービスがあります。一時景気低迷により組織拡大に対応するインターナルサービスのニーズは小さくなりましたが、採用難、社員の高齢化といった環境変化から、既存社員の戦力化が課題になってきています。特に顧客企業の管理職層の配置転換要請や選抜された幹部登用等から、インターナルアセスメントを管理職登用試験制度に組み込みたいとするニーズが高まってきております。従来からこの分野への積極的展開を目指しておりましたが、提案機会を拡大できる状況でもあり、当面は現状の環境のなかで当社の強みである新卒採用から入った顧客に絞りこんでの営業を継続してまいります。 特に当社直販チームは、Webテストを中心とした選考プロセスコンサルテーションを既存顧客に拡大し、深耕により複合的なサービスの提供を行い安定した売上の継続を図っております。2020年10月には、当社のインターナルサービスを総合的に紹介するWebサイト「SHLタレントマネジメントソリューション」(URL: https://solution.shl.co.jp)をオープンしました。今後はソリューション事例を具体的に紹介する各種イベントのライブ配信を開催しながらWebサイトを活用し顧客企業とりわけ大口顧客に対するインターナルサービスを充実させてまいります。

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成長シナリオ4 すべてのサービス商品をオンライン化対応に。新たなサービス商品の開発を。

すでに市場でブランドイメージを確立しているサービス商品に対してメニュー構成や品質の見直しを通じてユーザー満足度を上げていく改善努力を進め、さらなるシェアアップを図ってくことは当然です。今回コロナ禍の中で各種のアセスメントの対面サービス、対人サービスの提供ができなくなりましたが、企業のアセスメントへのニーズは変わりません。コロナ後に元の状態に戻ることを待つのではなく、できる限りサービス商品のオンライン化対応をはかりニーズにお応えしていく方針です。

2022年卒向けに新サービスのオンライン監視型Webテストをリリースし大手企業を中心に支持を集めています。新卒採用市場では、「通年型採用」「ジョブ型採用」といった新しい流れができつつあります。また中途採用でも恒常的な人材不足により、既存社員の人材棚卸を行いタレントマネジメントを活用し、いかに適材適所を実現してくかが問われています。最近AIによる選考、データ分析に基づく人材管理といった手法に注目が集まっていますが、こうした企業ニーズに対応するには、求める人材要件、採用基準の明確化こそが前提となります。当社がこれまで提供してきた高い信頼性、妥当性をもつアセメントツールこそこうしたニーズに合致するものです。当社の築いてきた実績と顧客との信頼関係を基盤にし、これからも常に企業ニーズを先取りし市場をリードしていける商品を提供できるような体制作りを構築してまいります。

:上記文中で使用している数値データは、2022年9月30日現在の各資料に準拠しております。